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プロローグ
晴天の空、初夏の心地よい陽気に東京は包まれている。
風が吹くと、辺りには砂埃が舞う。
見渡す限り立ち並ぶ荒廃したビル群、その中心に男は立っていた。
彼の名前は真司、「アリーシアン」の一員だ。
この世界には、様々な組織が存在する。彼が所属している「アリーシアン」もその内の一つだ。
それぞれの組織には目的がある。情報収集・破壊活動・殺人・自己防衛など、様々あるが、
「アリーシアン」は「元の世界に帰ること」を目的とした組織である。
見た目も気候も何一つ変わらない、しかしこの世界は確かに何かが違っていた。
ここにいる人間はわずか数万人程度とされ、一人の例外も無くこの世界に来る前の記憶を失っている。
政治家も居なければ裁判官も居ない、何をしても咎められることのない世界。
どうやって出来たのか、誰が作ったのか、何の目的があるのか、なぜここに連れてこられたのか。
そして、どうすれば元の世界に戻れるのか。
「アリーシアン」の一員として、真司はこの世界から脱出する方法を模索していた。
謎に包まれたこの世界の名前は──「セカンダリワールド」