第6話 謁見、そして呼ばれた理由
「さて、キヨダと申したかな。此度のアルカディウスの魔術により呼びだされし者よ。まあ、そう隣のアルカディウスを睨むでない。此度の召喚は、この国の将来がかかっていた故にな。」
そう、ヴァレンティンは述べる。
「"かかっていた"と過去形なのは如何に?」
と貴明は聞いた。
「焦るでない、キヨダよ。此度の召喚、"我が国の現状を打破しうる人物とその者が必要とする物を呼び寄せる"というものであったのだが。召喚されたのは、キヨダ、そちであった。キヨダよ、第一王女より聞くに、そなたは医学生と聞いた。この国にも治療術師はおるし、質も他の国に劣っておらんでの、それゆえ、此度の召喚は失敗であったと判断するわけじゃ。本当はこの世界の若く、気鋭のある、政に聡い者を呼び寄せるつもりでおった」
と、ため息混じりにヴァレンティンは答えた。
「じゃあ、僕は帰れるんですね?」貴明が尋ねる。
「それがのう、此度の召喚魔法はアルカディウスが作った魔法での、引き寄せることはできるが、送り返すという魔法はまだ作ってはおらんそうだ。まあ、そう、アルカディウスを睨むでない。穴が開いたら使い物にならなくなるぞ?」
「じゃあ、何ですか?僕は帰れないと?この辺鄙で中世的な文明しか無く、この寂れてきったない城下町しか無いこじんまりとしたお城しかあたりにないこの国で、魔法なんて脳みそお花畑みたいなリアリティの無いSFファンタジー小説の内容が今日日大流行しているような世界で、"間違えて呼んじゃった、テヘッ。ごめんね。戻せないの"なんて内容がまかり通るとでも言いたいんですか?冗談じゃない!そんなつまらない用事のために高等教育を受けてきたわけじゃない!」
貴明が声を荒げる。
「そう声を荒げるでない。こちらとしても、そなたと同じ気持ちなのじゃ。長きに渡る国力の低下、増えてくる他国の干渉、それを何とか打開しようと思い我が国稀代の魔術師、アルカディウスに頼り、召喚したものが治療術師の卵と聞けば、この国は終わりよ。治療術師の卵の高等教育など、この国の役にも立たんて」
ヴァレンティンが半ば投げやりに答える。
「お待ちください、陛下」
アルカディウスが割って入った。
「私、先ほどキヨダ殿の操る乗物に乗りましたところ、キヨダ殿の国の魔法技術は大変高い水準にあるのではないかと、考える所存でございます。また、その折にキヨダ殿と会話したところ、この国の文化、国力、地政を推し量ろうとする質問ばかりでありました故、キヨダ殿は大変広い見識を持っており、この若さにしては申し分ない人材ではないかと思い、陛下に於かれましてはもう一度御一考の余地があるのではないかと思いまするが故」
その言葉を聞き、ヴァレンティンは、
「アルカディウスよ、そちがそう述べるのならば、そちに責任をとってもらおう。彼の者をそちのもとに預ける。そして、結果を出してもらおうではないか。」
と、貴明ををじっと見据えたまま語った。
どんどん風呂敷を広げていく作者。そして、それに巻き込まれる貴明。
作者の行き当たりばったりな設定とご都合主義な展開に貴明はどこまで耐えられるのか?
次回、第7話 謁見の後とこれからのこと
次回予告って難しいね・・・