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第15話 一日の始まり

テストが始まる・・・

地獄が始まる・・・

 コンコンコンコン、コンコンコンコン

 貴明はノックの音で目が覚めた。昨日の議論のまま、途中で疲れてしまったらしい。確かな記憶が無い。

 アルは机に突っ伏して寝ている。

 ペンのインク壺がアルの肘に押されて、今にも中身をぶちまけそうな角度になっている。

 貴明は、インク壺を少し離れた所に置き、アルを揺すって起こす。

「呼んでますよ、アルさん。起きてください」

 数回揺すったところでやっとアルが目を覚ます。

「誰が呼んでるって?」

「誰かがドア叩いてますよ」

 ノックはまだ続いている。

 アルは、ドアを開ける。

 すると、大きめのお盆を持った女性が入ってきた。

「全くいつまで寝てるんですか?いつもならもう課業を始めてるぐらいの時間ですよ。実際、他の方々はとっくに朝食を終え、課業を始めてますよ」

「ああ、悪い悪い。昨日遅くまで色々とやっていたからね」

 と、口では謝りつつも全く悪びれる素振りのないアル。

「ああ、彼女はロゼッタ・ギャノング、私付きのメイドです。乳母のメリッサの子で、小さい頃から付き合いがありましてね。彼女が城に仕えるようになった後に私もこの国に仕えるようになりましてな。そして私を知っているってことで私付きになったというわけです」

「はじめまして、紹介もありましたが、ロゼッタ・ギャノングと申します。あの、失礼ですがお名前は?」

「こちらこそはじめまして。清田(キヨダ)貴明(タカアキ)と申します。アルさんのお知り合いですか」

「ええ、結構長い付き合いですね」

 貴明は、どこか壁を感じさせるような雰囲気を彼女から感じた。

「それよりも朝食よ。早く食べてお仕事を始めてはどうかしら?時間は無限にあるわけじゃないのよ」

 お盆にはパンとスープが載っていた。スープはやや冷めているようであった。

「そうだな。では朝食を済ませてしまおうか」とアルが言った。

 案の定、スープは冷めていた。


 朝食を終えると、ロゼッタは食器をお盆に載せ、「失礼します」と一言述べ、片付けに行った。

「そういえば、治療魔術はどうするんです?」

「ああ、それな。君に合わせたい人がいる。そして、君がその人に治療魔術を使ってどれ位効くかで判定したいと思うんだ。その人は生まれつき身体が弱くてね。聖級の治療術師に治療してもらってもさほど良くならないんだ。ただ、治療術で、幾ばくかは楽になる。君の治療術でどの位楽になるかで格付けをしようって訳さ」

と、アルが言った。

「怪我の方はどうするんですか?」

「そのうち怪我人が出たらやってもらうさ」


 アルに連れられ、城内を移動する。

 ある部屋の前で止まった。アルがドアをノックする。中から人が出てきた。

「これはこれはアルカディウス様。今日は一体どのようなご用件で?」

「おはよう、マーシー。今日はちょっと新しい治療術師を見つけたもんでね、お姫様の治療をやってもらおうと思って来たのさ」

「何級ですの?」

「これがまだ解らないのさ。でも聖級ぐらいはいけるんじゃないかと僕は見積もっている」

「まだ級もわかっていないんですの?そんな素性の分からない治療術師の術を姫様に試すだなんて」

アルと言い合っている人はマーシーと言うらしい。二人の言い合いはまだ続く。

「もし聖級なら、姫様にとっての負担は軽くなるだろう。そして、何かあった時にも治療術師が近くにいてくれることになる。姫様にとっては悪く無い話だと思う」

「しかし…」

そんな中、部屋の中からもう一人の声が聞こえてきた。

「マーシー、お客様かしら?」

「ええ、アルカディウス様でございます」

「なら…、お通しして差し上げて…」

「しかし、姫様、私は…」

「いいの、マーシー、話は聞こえておりましてよ…」

「分かりました。では…」

聞こえてくる声はか細く、弱々しい声であった。

 部屋に入ると、ベッドに上体を起こしている、か細く、儚げな印象を抱かせる少女が居た。どこかモニカに似ている雰囲気であった。側にお付の人が居た。

「やあ、エリカ。調子はどうだい?」アルが話しかける。

「おはようございます、アルカディウス様。今日はとても暖かくて、いい気分ですわ」

「アルでいいさ。それは良かった。今日は君に合わせたい人がいるんだ。紹介しよう」

アルに手招きされてベッドに近づく。

「はじめまして、清田 貴明と申します。最近この国へとやってまいりました。よろしくお願いします。あ、貴明のほうが名前です」

「はじめまして、清田様。私、エリカ・オーレウシア・カーディオと申します。ベッドの上からで申し訳ありませんが、あまり体調がすぐれないので、ご無礼をお許しください」

どうやらモニカの姉妹の様だ。アルに目線を送ると、彼が話し始めた。

「彼女、エリカ様は、モニカ様の妹君であらせられる。今日君を彼女に会わせたのは、君に彼女を治療してほしいからだ」

彼女を見て、貴明は、アルに尋ねた。

「エリカ様は馬車に乗れますでしょうか?」

「お付の者が数人いれば大丈夫だと思うが」

「僕のアパートでエリカ様を診たいんですが、大丈夫でしょうか?」

実はコミュ障な貴明。

儚げな少女とコミュニケーションは取れるのか?

そして、エリカを蝕む病魔とは?

次回、第16話 初めての患者


次回更新は結構遅れると思います。

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