悪役道邁進中
読みにくかったらすみません。
掃除した時見つけた写真。
写っていたのは自分と懐かしい面子。
名を呼びながら一人一人指でなぞってみる。
意味のない感傷だ。
そう頭でわかっていてもそれに浸らずにいられない。
掛け替えのない仲間達。
彼女達との思い出は今も色褪せることなく覚えている。
幸せな日々だった。
思い出達はどれもまぶしいくらい輝いている。
でも、彼女達を裏切った俺には不要だ。
指に灯をともして写真を燃やし尽くす。
これを残してしまった自分の無意識の未練を燃やすように。
思い出してしまった思い出達を燃やすように。
灰になったソレを見て泣き出したくなる。
泣いて、喚いて………許しを乞いたくなる。
わかっている。
人でなしの俺にその権利など無い。
鮮烈に笑え。
何も恐れる物はないと自信の表情を浮かべろ。
情けない姿を誰にも見せるな。
ゲーム(・・・)の俺を思い出せ。
俺は傲岸不遜の最凶の悪役、セルベルト・バルツフィードだ。
***
ギャルゲーの世界に転生した。
それも主人公でもモブでもなく、悪役として。
悪役なんてやりたくないと必死に抵抗した。
善行を積み、周りから聖人扱いされてしまうぐらい頑張った。
原作では孤高であった自分に友人が出来、掛け替えのない人達すら出来た時には歓喜の雄叫びをあげてしまいそうになった。
このまま悪事とは関係なく生きていこう。
悪役という一点を除けばこれ以上ないハイスペックなセルベルト・バルツフィードという人間なのだ、薔薇色の人生間違いなし。
………なんてことを思っていた。
世界を呪う声が頭に響くようになった。
初めは夢だけで、次第に起きている間にも聞こえだし、最後には四六時中怨嗟の声がずっと聞こえるようになった。
それでも気にせず善行を積み続けた。
すると更に無意識で悪事に手を染めようと体が勝手に動こうとしだした。凶器を持ってどこかへ行こうとしたり、罠をしかけようとしたり。
それでも気にせず善行を積み続けた。
気をつければいいと。そう自分に言い聞かせて。
気をつけてさえいれば、大丈夫だなんて………。
そんなことを本気で考えて。
だから、俺は彼女達を裏切る羽目になった。
ある日ふと意識が暗転した。
その前に一瞬頭で響き続けていた怨嗟の声が途切れ。
かわりにおぞましいほど可憐な声が俺に何か告げた。
何て言ったのかは記憶に残っていない。
それよりも鮮烈な出来事があったからかもしれない。
意識が元に戻った時には
知り合いも、友達も、掛け替えのない人達も
皆真っ赤に染まって事切れていた。
もしも何も知らなかったら。
それでもなお善行を積もうと、もがき続けたかもしれない。
彼女達を殺した誰かーーー頭のどこかでわかっている人物ーーーを恨み、絶望しながらも、また前に向かって歩き続けたかもしれない。
そんなことある訳がなかった。
忌々しいほど鮮明に意識を失っていた時の記憶があった。
目を見開いている知人を
絶望の表情を浮かべた友人を
死ぬその時まで信頼の目を向けてきた彼女達を
何の慈悲もなく惨殺した記憶が。
楽しんでいた。自らの知人であり、自分を信用しきった人間を殺すことを。絶望する様を。
それでも信じようとする姿勢すら滑稽で面白いと笑っていた。
笑って、踏みにじっていた。
心が折れる音がした。
心が弱い俺にはもう耐えきれなかった。
だから逃げた。
もう怨嗟の声を聞かなくてすむように。
もうこんな風に自分が傷付かないですむように。
悪役になるという逃げ道を俺は選んだ。
今までの自分を信じてくれた全ての人を裏切って。
幸いにも聖人よりも悪人に近い性質であった自分にとって聖人であろうとした時より悪人であろうとするほうが簡単で気が楽であった。
最後に破滅が待っていようと、もうこうするしかない。
楽な逃げ道以外を選ぶにはもう疲れ過ぎていた。
だから俺は今日も彼女達を裏切って悪役道を邁進する。
読んでくださってありがとうございます。
↓設定など
セルベルト・バルツフィード
転生者インストールされた悪役。
ちなみにお察しかもしれないが掛け替えのない彼女達は彼のハーレム。
聖人している時はモテモテのハーレム作っていたのに悪役すると孤高になる不思議。
うじうじ悩むヘタレで心が結構弱い。
暗示にかかりやすく、自己暗示で頑張る。
ハイスペックと原作知識が混ざり最強に見える。
自殺しない理由は彼がそれを実行する勇気が出ないほど心が弱いというのもあるが、悪役として主人公に倒されることで贖罪にしたいという無意識の願望によるもの。
謎の女の子の声が何て言っていたか。
たぶんこの段階では謎の方がきっと面白い。
今後の展開は
・原作通り主人公が断罪する
・うっかり主人公やられる
・主人公が悪役を誑す
・ぼくのかんがえたさいこうのあくやくいじめ
・まさかのギャグ
・~そして百年後~
・その他
のどれかでしょう。たぶん。
最近の悪役ブームに乗ってみたかった…
反省しています。
精神脆い人は助けてあげないと!と普段は思うのですが今回はちょっと突き落としてみました。罪悪感が半端ないです。
でもなんでしょう、この胸の高鳴りは…
これを追っていけば新しい自分を見つけられる気がする…
戯れ言はさておき
強制力とか結構好きです。
したくないけどしなくちゃいけない…
それに屈するもよし、抗うもよし。
でも逃げる(死ぬなど)は個人的に頂けないので、仮にセルベルトが自殺を選んでも作者は許しません。やったね、セルベルト!拘束力が増えたよ!
深夜テンションで書いているので割と見苦しい文なのですがそれでも読んでくださった女神のような読者様方に最大の感謝と祝福を!