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ゲームで人を殺してなぜ悪い!? ~私の彼氏はPK(プレイヤーキル)職人~  作者: ネガメガネ
第2章 早くレベル400ぐらいになってください。えっ、私、まだレベル4なんですけど…
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第98話 私を助けてくれる人が私に与えた役割を必死になってやってみる

 「ねえ、エミリー覚えてる? 第1階層のホテル前であなたが私に言った言葉」


 私は表情一つ変えないエミリーに語りかけた。傍から見るとそれは人形に語りかけているプレイヤーに見えたかもしれない。


 「エミリーは言ったよね。なぜ私達、異界人プレイヤーはNPCのことを人形のように扱うのかと」


 私は思い出す、あの時はRDHランダムデスハッピーの乱入のおかげで有耶無耶になってしまったが。


 「あの時、伝えられなかった答えを、今、言うよ」


 私が唯一、エミリーを元に戻せるとしたらやはり、自分なりに導き出したあのときの答えを彼女にぶつけるしかないだろう。


 「信じられないかもしれないけど、この世界はね、私達、異界人が作りだしたものなんだよ。世界の名はセカンドワールドオンライン。たぶん、私達がいる世界がファーストワールド、エミリーたちがいる世界をセカンドワールドっていう意味なんだろうね。私達が作ったって言ったけど、私は神様でも何でもなくて実際に作ったのは技術者とゲームマスターだよ。私はお金を出してこの世界に来ているプレイヤーなんだ。チケットを買ってコンサートに参加している客みたいなものかな。この世界はね、最初は私達、ファーストワールドの人間が娯楽のために作ったんだ。気晴らしかな。けれど、技術の進歩とその優れた作品性で、いつしか、ファーストワールドの全ての人間がこの世界にくるようになった。もちろん、ほとんどが第1層にいるけどね。ファーストワールドの多くの人間は自分の果たせなかった夢をこの世界で果たそうとしたんだね。エミリーも感じたことがないかな、お姫様以外の自分の可能性が・・・剣王として冥竜王打倒に動くのではなく、その情熱を別のことに傾けていたらとかどうなってたかとか、空想したことがないかな。私達、ファーストワールドの人間ってちっぽけなんだ。現実にあくせくしてる。だから、セカンドワールドで少しの間、第2の人生を楽しみ、またファーストワールドに戻り頑張る。戻って何を頑張るのかは分らないけどね」


 私の声は自分でもずいぶんと穏やかなものになっているのが分った。


 「私はねファーストワールドではただの女の子なんだ。エミリーみたいに剣を振り回すこともできないし、たぶん熊一匹倒すこともできないよ。元の世界ではなんの力もない学生なんだ。実は祥君も報音寺君もそうなんだよ」


 ずっと語り続けているがエミリーにはなんの変化もない。私の後ろで祥君とRDHランダムデスハッピーの壮絶な戦いが始まっている。


 「ファーストワールドってちっぽけなんだ。養鶏場みたいなところって言えば分るかな。決められた時間に起き、決められた時間に働き、決められた時間に寝る。そこからはみ出せば、規格外として弾き出され、また一段下の階層に落ちてしまう。たまに休みや休憩もあるけれどそれだって周りの環境や自分の環境に作用される。結局、その環境を楽しんでいない人間にとってはどこまでいっても養鶏場なのかな。そんな人間がセカンドワールドに来て、ゴリラみたいな怪力を発揮したり、すごい魔法を撃てたりしたら、死すら回避できたら、そうできないあなた達を格下と侮ってしまう。彼らの中ではこの世界は確かな作り物、娯楽のための世界だからあなた達を人間扱いできないだと思う。そして、そんな雰囲気に私も呑まれてたんだと思う。だから私は無意識のうちにあなたちを人形扱いしてしまった」


 私は後悔を口にする。NPCをただの人形だと思っていたことはないが鋭敏な感覚を持つエミリーは私の何気ない動作からその侮りを読み取ってしまった。友人だと思っていた人間からモノ扱いされれば当然、傷つくだろう。


 「けれど、エミリーやこの世界の人達と出会って変わった、いや、この世界によって私が変えられたって言うのが正しいかな」


 私はセカンドワールドオンラインの中で出会った全てのNPCを思い出していた。


 「さっき、エクシード十剣って人たちと出会ったよ。すごいね、あの人達。みんな、エミリーを治すために自分の身を削って私達に挑んできたよ。中には自分の行いが本当に正しいのか葛藤しながら挑んできた人もいた。エクシード十剣だけじゃないよ、エクシードの兵達もか。私達の方が格上って分ってても怯まずエミリーのために挑んできたよ」


 実際、彼らは強かった。力敵わずとも、その熱量が凄まじかった。


 「これのどこがゲームで、ここに生きる人間がどうして人形だなんて言えるんだろうね」


 私は自身の想いを吐露した。そう、彼らはNPCノンプレイヤーキャラクターではない。もはや人間なのだ。人のために戦い、人のために泣き、人のために苦悩できる。そんな存在は人間だとしか定義できない。


 「けど、これだけの人がこうやって動いてくれているのにあなた独りがまるで人形のようになっていない、エミリー」


 私が冷たく突き放すとエミリーがわずかに反応した。


 読んで頂きありがとうございました。11時頃にアクセスが集中していたようですが投稿遅くなり申し訳ありませんでした。もう少し、早く投稿するつもりでしたがなかなか書けず、ズルズルと後ろに伸びてしまいました。明日こそは!しかし明日の投稿時間は未定なのです。なぜなら今から書くからです。

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