第974話 再び帝都にて⑭
「帝国の同盟者だと!? そんな人間、建国以来存在するわけが…」
「待て、あのマムルークの梟雄か!? アウラングゼーブ将軍の正規軍の攻勢を僅かな手勢だけで守り切ったという英雄。我孫子帝はその手腕を買って、部下にするのではなく対等の同盟関係を結んだという」
「そう、その春日井よ。それで、どうするの? 同盟に対するあなた達の個人的見解はいいわ。賛成でも反対でも、それは個人の自由。内心の自由なのだから。それでも我孫子と結んだ軍事同盟は正規のもの。つまり、帝国の正統な決断に他ならないわ。よって、私が国家の賓客であるというのは揺るがぬ事実。アベラールはそのあたりを理解して的確に行動したわ。あなた達はどうなの?」
自分でもびっくりするぐらい冷ややかで呆れた声が出ている。
私は私で、随分と腹を立てていたようだ。
私がぞんざいな扱いを受けたことより、私のために動いてくれたアベラールへの扱いがあまりに酷かったからだ。
「春日井殿とは露知らず、無礼を働きましたこと誠に申し訳ありません。これは私が個人で犯してしまった罪。何卒、帝国魔法研究所に対しては寛大な処置をよろしくお願い致します」
顎髭の男が膝をつき、頭を垂れる。
私が我孫子に告げ口すれば、帝国魔法研究所の存続にまで関わると瞬時に理解したのだろう。
自分の首を切って、組織の存続を願うとは組織人としてなかなかに優秀だ。
それを見て、団子鼻の男も血相を変えて膝をつく。
ようやく事態の深刻さを理解したようだ。
これなら、もう、お仕置きは十分だろう。
釘を刺すぐらいで済ましておこう。
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