第965話 再び帝都にて⑤
アベラールの案内の元、ようやく帝国図書館に辿り着いた。
中に入るとその蔵書の数に圧倒される。
帝国の建物の中では珍しく天井が低い。
通路も2人がすれ違うことのできる最低限度の広さしか確保していない。
ただ、通路と通路の間に天井までそびえる本棚が設置してあり、そこにぎっしりと本が敷き詰められている。
この不自然な配置はおそらく蔵書が増えすぎたため、通路を削って本棚を設置したのだろう。
外聞をかなぐり捨ててまで、知識の収集に挑むとはまさに天晴れである。
帝国の実態、底力を見せつけられた気分だ。
「さて、どう攻めたらいいものか…リファレンスはあまり得意じゃないんだが…前提条件として、情報の機密が下がるため、人手はさけない。とはいえ、この蔵書を全て当たるのは愚の極み。なるほど、早くも僕の知性が試されているわけか…いい問題だな…」
アベラールの独り言が耳に入ってくる。
どうやら、熱中すると注意力が落ちるタイプのようだ。
「ねえ、帝国魔法研究所に魔法現象を調べてる人とか、収集分類してる人とかはいないの?」
餅は餅屋に。専門は専門家に任せた方が手取り早い。
そう思っての何気ない会話だったが、返ってきた答えは意外なものだった。
「ふふっ、そんな安い手にはひっかかりませんよ。いるにはいますが、異端の系譜です。端的に言って、日陰者だ。そのくせ、プライドが高く研究の邪魔をされるのが嫌いだ。短時間で面会許可を得るのが難しい。あなた程の方がずっと、ここに滞在できるというわけではないんでしょう。って、僕は馬鹿だ〜これは知力を試しているのではなく、ヒントだったのか! なるほど、滞在期間の考察が抜けていた…なんて、大ポカを…大舞台で浮ついていたというのか…」
なにやら一人で浮かれて、一人で落ち込んでいる。
これはしばらく放置していた方が賢いのかもしれない。
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