第964話 再び帝都にて④
これまでの慇懃無礼な雰囲気は鳴りを潜め、確かな敬意が伝わってくる。
これは完全に、身バレしたようだ。
だが、会って数分、会話も録にしていないのになぜバレた?
「なぜ、あなたが春日井真澄だと分かったか? そんな下らない質問はやめて下さいよ。僕程の知性があれば、あなたの正体を看破するなど容易い。むしろ、僕的には皇帝陛下が近くに潜んでいるのではないかとドキドキしたわ」
前言撤回、評価も更新。
有能なようだが、かなりのお調子者でもあるようだ。
「僕は一度、出会った人間を忘れない。顔を見るとすぐに覚えてしまうんだ。まして、君は絶対不可能な帝都襲撃を為して生還した女。ああ、僕はあの時、北の砦で兵役についていたんだよ。軍師補佐って、つまらない仕事だったが、あなたの姿を確認できたのだけは収穫だった。あなたの縦横無尽の働きは決して忘れられない。本気で北の砦の壊滅。帝都が武力制圧される事態を心配したからね。自分の常識がボロボロと崩れていくのは実に痛快な体験だったよ。ともかく、この僕が帝国の同盟者、春日井真澄を見間違うはずがない。探りを入れるためにも、最大限のサービスを行ったんだが気に入ってもらえたかな?」
なるほど、あれは接待だったのか。
接待の方法が間違っている気はするが、彼なりの最善のもてなしだったのだろう。
それに随分と好意的で、私を買ってくれているようだ。
ちょうどガイドも欲しかったことだし、ここは彼の行為に甘えるとしよう。
読んで頂きありがとうございました。次回の投稿もなんとか頑張ります。
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