第949話 コンビニに行くより簡単なレベルアップの方法は? ㊱
「吾輩がログインせんでも、この世界は回るというのも救いじゃった。手慰みで作った吾輩の王国。それでも、王としての責務だけは果たさんといかんとずっと思っておった。じゃが、そんなことはなかった。皆、自分で考え、自分で国のためにと行動していった。それだけで、国が回っていった。吾輩の、吾輩による、吾輩のための国家なのに…不思議な感覚じゃったよ。裏切られたような。それでいて、嬉しいような、寂しいような。吾輩には子はおらんが、子を持つ親の感覚というのはこういうもんなんじゃろうな。もちろん、全てが上手くいくことばかりではなかった。時には失敗し、間違いをおかす。今回のようにな」
そこで、黒嵯峨は息を息を整え、晴々とした表情で言いきった。
「だが、それでいいんじゃ。間違えから学習し、前に進むことができれば。もはや、吾輩の役目は終わった。吾輩など、時折、顔を出すだけのお飾りでいい。王の役目を継ぎたい者がおれば、禅譲しても一向に構わん。春日井真澄殿、お主が継ぐか?」
突然の禅譲宣言。
私は泡を喰って否定する。
二領地でさえ、安定経営できないのだ。国家の運営など、今の私には不可能だ。
「なにも、全てを自分が担う必要はない。領地経営と同じだ。大方針を決めて、部下達に丸投げする。吾輩らがやることは進捗管理だ。吾輩の場合はスピードを特に重視したな」
段々、黒嵯峨の口調が本気モードになってきた。
冗談で言っているのではないという気配すら感じる。
話をしている内に段々、本気になってしまうというのはよく聞く話だが、まさか、自分が体験するとは思わなかった。
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