第935話 コンビニに行くより簡単なレベルアップの方法は? ㉑
左下から右上へ腕を振り上げるように放った。
ロード・ニル・タイガー(敵)がどれほどの硬度を持っていても関係ない。
斬るという概念そのものを叩き込んだからだ。
星を断つほどのエネルギー量を変換して作られた概念兵装だ。
その防御力に関係なく、斬られたという結果のみが残る。
この技で生き残ったのは拳聖ただ一人。
ロード・ニル・タイガーの胴体は見事、真っ二つに割れ絶命した。
その死体に再度、哀悼の意を捧げ、その場を後にする。
何とか勝てた。
完全に紙一重の勝利だった。
そう認識すると腰が抜けた。
HPは僅かに一目盛り。
辛勝に過ぎる。
「はぁああ………」
魂が抜け落ちるような深いため息をつき、ようやく戦闘終了の実感を得る。
間違いなく、これまで会った中で最強レベルのモンスターだった。
上位に行くとモンスターですら、ここまで頭を使うものなのか。
相手がプレイヤーでないからとどこか安心していた。
ステータスで圧倒してくることはあっても、心で負けることはない。
そんな緩い想定をしていた今までの自分を殴り倒したい。
ロード・ニル・タイガーからは絶対に殺してやるという確かな殺意を感じた。
裏返せばそれは、絶対的な生への渇望だ。
私を殺して、生き抜いてみせるという強固な決意。
死んだ目をしたプレイヤーよりも遥かに濃厚で、強い強い願望の現れだった。
あれに比べれば、序盤、中盤で戦ったモンスターなんて、接待プレイもいいところだ。
機械的で生きようとする意志をほとんど感じなかった。
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