第93話 私を助けてくれる人の前に現れたメイド剣士
私は改めて祥君の規格外の力に驚き、彼を見ていた。城門の素材は木だったがそれでも厚さ30センチはあったからだ。辞書三冊分はあったぞ…
私が目を丸くして彼を見ていたのを気づかれたからか、彼は苦笑いしながら答えた。
「これぐらいできないと神殺しはできないよ。急ごうエミリーが待ってる」
前回と違って城の内部は静まり返っていた。
カツンカツンと廊下に私達の足音だけが聞こえる。まあ、今の私達は招かざる賊。誰も歓迎などしてくれるわけがない。
などと思っていたら窓から猛烈な勢いで矢が飛んできた。どうやら武器による歓迎はしてくれるようだ。窓の外、棟の上に人影が見える。あそこから弓で狙撃したのか!?
「エクシード十剣が一人、狩人イブン」
よく通る声でイブンと名乗った男が名乗りをあげてくる。
もはや剣士じゃないし、大丈夫なのかエクシード十剣! などと心の中でつっこみを入れていたが弓の腕は確かなようだ。走っている私達を窓越しに狙撃したのだから。
私は遠距離攻撃を持ってないしどうしようかと考えていたら祥君が魔法で打ち落とした。あっけない、かませにすらなれていない。
気を取り直して先へ進もうとするといつの間にか目の前に一人の少女が現れた。
「エクシード十剣が一人、三級メイド剣士ウェストファリア」
今度はメイド剣士か…一昔前のゲーム、物語には必ず一人は登場するよな、メイドシリーズ。メイド剣士。メイド操縦士、メイド発明家、メイド長…ということは絶対、執事剣士も出てくるよな。などと呆れていると祥君がいつになく真剣な顔をしている。
「まさか、エウクレイデスのメイドではあるまいな」
「ほお、さすがはショウ様。博識ですね。いかにもわたくしはエクシード王国から冥竜王打倒のためメイド王国エウクレイデスに留学し、三級メイド剣士の称号を得たもの」
どれだけそのエウクレイデスとやらが凄いのかは分らんが完全にドヤ顔でウェストファリアは語りかけてくる。そして、声のトーンはさらに一段階落ち、もはや恐喝の様相を呈してきた。
「すなわち、お分かりか、この私を倒すということがなにを意味するか」
「メイド王国エウクレイデスを敵に回し、エウクレイデスで学んだ全てのメイドを敵に回すということ…」
「メイド王国エウクレイデスとは男子禁制のメイド王が執政を務める国だ。男子禁制だから国民は原則女性。男性は入国時に仮面をつけねばならない。王国なのに、統治者が王ではなく執政なのが特徴なんだ。執政がいつか使えるべき主のために王国を代理運営してるんだ。そしてたとえ執政が倒れても主のために働ける自分と同じ能力を持ったメイドを育成しようと教育機関を作ったんだ。ここで教育を受けたメイドは全てのメイドの頂点に立つ言われている。まさにメイド教育の最高学府。最高教育機関」
「見事な説明です。ショウ様。しかし、招かざる客とて客は客。いつまでもお客様に説明をさせてはエウクレイデスのメイドの名折れ。後の説明はわたくしが受け持ちましょう」
ウェストファリアはまるで教師のように朗々としゃべった。
「わたくし達エウクレイデス製メイドは皆、エイクレイデスメイド同盟に属しているのです。私達エイクレイデスのメイドの矜持に傷を付けたものは神や王侯貴族、老人、赤子、幼子、国であっても許さないというものです。具体的には王侯貴族の場合、そこに勤めているメイドが全員引き上げます。そして、代わりのメイドは永久に補充されません。これだけで屋敷や仕事は回らなくなり自壊します。というよりもエイクレイデスを敵に回した時点で周囲の人物から縁を切られたり、商品を売ってもらえなかったりしてやはり詰みます。老人や赤子、幼児の場合も食卓に嫌いなものばかり並べて精神攻撃します。国家の場合はエウクレイデスが宣戦布告して戦争を行います。周辺諸国はこぞってエウクレイデスの側につくでしょう。エウクレイデスにはそれだけの価値があるのです」
「戦闘系でその同盟を使うのってずるくない?」
私は彼らの真面目なやり取りにひきつった顔でそう指摘した。
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