第925話 コンビニに行くより簡単なレベルアップの方法は? ⑪
突如、影が私に迫る。
私しかいない空間で影が伸びるなど、ありえない。
上か!?
気付いた時には、そのモンスターは肉薄しており、鋭利な爪が、私の首元を狙う。
後方に全力で飛び、なんとか直撃だけは避ける。
だが、剛爪は回避したのに、丸太で殴られたような衝撃を感じる。
同種の能力を使いこなす私には分かる。これは【気】だ。
驚くべきことに、モンスターが全身に【気】を張り巡らせていた。
【気】を使うモンスターか…
いても不思議ではないが、レアだな…
いや、それよりも先程のファーストアタックの手際を褒めるべきか。
会敵に備え、位置情報は常に確認していた。
だが、奴は殺傷圏内に入ってから、さらに速度を加速させやがった。
視覚と【探知】のズレを突いてきたのだ。
理性でやっているのか、天然でやっているのか不明だが、そういう引き出しをたくさん持っていると想定しておいた方がいい。
高く設定しておいた危機レベルをさらに上げる。
最悪、勝てないのなら逃亡も有りだ。
気付けば、捨てたはずの逃亡の手段を再考している自分がいる。
なるほど、難敵だ。
現れたモンスターは予想通りの大型四足獣。
見るからに俊敏そうな体躯をしており、サーベルタイガーのような、巨大な牙を持っていた。
既に隠しきれない敵意を漲らせ、たとえ、人語を解することができても、対話など不可能だと分かる。
倒しきるしか、私が生存する方法はないだろう。
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