第902話 コンビニに行くためのパーティーメンバーは? ⑩
「お主の来た理由は大方、分かっておる。カートライトじゃろう。じゃが、あ奴は帝国の至宝。むざむざ、三等国なんぞにくれてやる訳にはいかん」
ひどい言われようだ。
だが、会話が成立するだけ気は楽だ。
強引にむしり取ってもいいが、このベーメンという官吏、ずいぶんとカートライトを買っている。
同時に、我孫子を睨みながら、破綻しないギリギリの線を狙って私に交渉を持ちかけてくる。
情の人であり、理の官吏でもある。
こういう人間を雑に扱うのは私のプライドが許さない。
なにより私が欲しいのはカートライトだけではない。
それ以外の伸び悩んでいる帝国の人材、全てが欲しい。
よって、強行策は却下。正々堂々、相対で勝つ。
「その至宝とやらが、冷遇されていると聞いたからスカウトしたんだけど。ベーメンが認めるほどの男がこんなところでくすぶってる。それって不幸なことだと思わない?」
「確かに我が帝国第二秘書室は花形とは呼べん。だが、それがなんじゃ。才能があるからといきなり花形になんぞなれるものか。何年も下積みをしながら修行する。そうして、ものになった判断すれば、どんな場所にでも送り出してやるわ」
「それって、何年かかるの? というか、そんな政治力があなたにあるの? カートライトは、もう充分、ものになっている。あなたが根回しもしている。それでも、受け入れ先が見つからない。それが実情のように思えるけど。皇帝とも話したけれど、そもそも現在の帝国には幹部職に空きがない。不正も失敗もないから人事制度が硬直化してるのよ」
ベーメンは反論せず、ただ唇を震わせている。
憎たらしい相手に、ここまで言われて我慢できるのは高い知性が為せる技なのか、己の職責に全幅の信頼をおいているからか。
いずれにせよ、その隙きを突かせてもらう。
「反論してこないってことは心当たりがあるんでしょう。それは治世の証明なんだから、恥じることではないわ。あなた達のような有能な官吏に取っては不幸なことかもしれないけどね」
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