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第9話 人生初の高レベル戦闘の観戦です

 「待てよ! そんな取引無効だろ。大体、カード渡してオレら全員を元の街まで送ってくれる保障がどこにあるんだよ」


 清水谷君が鋭い声で制止してきた。

 重装甲の男がそれをニヤニヤと笑いながら聞いている。


 「だって、仕方がないでしょ。ログインアバターは一人一個しかもってなんだし、アバターがずっとこんなところにあったらネットがまるで使えなくなるのよ。そこまでの責任を負えないよ」


 清水谷君の気持ちは嬉しい。

 けれど、事は私一人だけの問題ではない。

 巻き込まれたメンバー全員の将来がかかっているのだ。

 擁護してくれた清水谷君の気持ちなどまるで考えず、反射的に返していた。


 「それがお前のせいって言う前提が間違ってるだろう。どんだけお人よしなんだよ。お前はただ、ビギナーズラックでカードの大当たり引いて嬉しくなってみせびらかしただけだろ。実際、さっきのお前の笑顔はキラキラしてて可愛かったし…」


 そう告げると私から重層騎士甲冑の男達へと視線を移す。


 「仕方がない、ここまでか…」


 誰に告げたわけでもない独り言だろう。清水谷君は何かを諦めたような顔でカードを取り出し叫んだ。


 「魔法カード【異世界の友との盟約】発動、HPの10分の1を捧げ特定プレイヤーを強制召喚!」


 清水谷君が叫ぶと目の前に上から下まで真っ赤に染まった人型の岩の塊が現れる。さっき、情報管理局の側にあったやつだ!! けれどそんな石ころを呼んできても!!!


 「ログアウト、ログインの同時展開」


 そう清水谷君がつぶやくと目の前の清水谷君の姿はログアウトし、情報体アバターは消え、召喚された真紅の人型岩塊から黒衣を纏った清水谷君が現れる。

 改めて清水谷君のステータスを見るとHPは?????? プレイヤーキルマイスターという称号まで持ってる。なんなんだこれは!!!!


 「その黒衣、その称号!!! まっ、まさか、あなたは!!! セカンドワールドオンライン最多殺人記録保持者、多重殺人者プレイヤーキルマイスターの称号をもつ殺人中毒者のショウか!!!!」


 「へえ、レベル150を超えてるってのはブラフじゃないんだ。よく知ってるね、そう僕が冥府暗殺者のショウだよ」


 清水谷君がまるでゴミでも見るかのように重装甲騎士甲冑の男達に宣言する。


 「さて、重装甲の方が青青森君、二刀流坊主のカード使いの方が赤秋田君か。状況を飲み込んでもらったと思うけど、この女の子は僕の連れ合いなんだ、悪いけど見逃してくれないかな」


 初見の相手の名前を完璧に見抜いた。通常、フレンド登録でもしていなければ、本名を見抜くことなどできない。

 プライバシー設定はレベル1の状態でもかなり強力に働く。

 その上で個人情報を完璧に見抜いたとなれば、強力な鑑定系のスキルでも使ったのかもしれない。


 「びびんな青青森! お前の防御力と俺の攻撃力があれば勝てるって」

 

 赤秋田と呼ばれた男が血走った目で青青森に声をかける。


 「お前が前衛、俺が後衛だ。やつは見たところ軽装だ。おそらく職業は魔法剣士、武器は片手剣、属性は闇だ。たぶんこの状況はやつにとっても突発的で武装の準備をしてなかったんだ。あの軽装なら武器は通るし、やつの攻撃ではお前の重装甲を抜けない。闇系統の魔法はお前の鎧が吸収回復する。勝算はある。時間制限有りって状況を作りだし、戦況を整え、五分の勝負に持ち込む。逃げるきるための切り札もある。ここは一勝負すべきところだろ」


 臆した様子の青青森とは違い赤秋田は随分と修羅場馴れしているようだ。

 瞬時に格上相手でも負けない戦術を組んできた。

 

「話はついたぜ、殺人中毒者さんよ。あのカードはSランクだ! いくらあんたが相手でも諦めきれねーな。それにあんた自分が賞金首ってことわかってて娑婆に顔出してんのか!!!」

 

 赤秋田は何の予備動作も無くカードをかざして叫んだ。


 「魔法カード【魔獣に対する警告】を使用! 賞金首1億の殺人中毒者がここにいるぞ!!!」


 おそらく魔法カードによる効果なのだろう。私の脳内に突然、赤秋田の声が響いてきた。周りの人間も顔をしかめている。おそらく、効果はこの周辺の全てのプレイヤーにこの声が届いたのだろう。


 「形勢逆転だ、さっさとトンズらしないとあんたのほうこそヤバイのでは?」

 

 「はっ? それこそ第3層程度の賞金稼ぎ風情が束になってやってきたところでにオレが殺られるとでも!? なめられたもんだ。いいぜハンデだ。この初期装備の【鋼鉄の剣】で勝負してやるよ」


 清水谷君は焦るどころか涼しい顔で挑発し返してる。おいおい、その剣、私と同じ最弱装備だぞ。それ以上下のランク武器はないって代物だぞ。大丈夫なのか!!!


 「ふざけやがって!!! 【フロートダッシュ】!」


 そう叫ぶと青青森はその重量に反して凄まじいスピードで清水谷君に突進していった。


 「へぇ~自分の重量をホバー系魔法で補ってるんだ、考えてるね~けど、小回りきかないし、素直に脚力を鍛えたほうが早いと思うけど」

 

 青々森を観察しながら清水谷君はそう呟き、また新たなカードを使用した。


 「まあ、いいか、HPの10分の1を捧げ、魔法カード【千の壁、万の壁】を使用。このカードを使用中、カード効果の消失まで1ヒットを全てダメージ10に変換する」


 「そんな!!!」


 青青森と赤秋田は同時に絶句した。もう、十数撃入れただろうか、しかし、清水谷君は防御も回避も行わず攻撃を受け続けた。それでもHPは微動だにしなかった。


 「まあ、千回攻撃を当てればカードの効果は消失するから単なる手数稼ぎのクズカードだけど」


 「さて、あんまりチマチマ、バトルして時間かけても面倒だし」


 清水谷は右手をかざした。


 「関熱波」


 凄まじい熱の波が青青森の方角全体に飛び、青青森の巨体がはるか後方まで吹っ飛ぶ。


 「今のは閃熱系第四階位の呪文を無詠唱、ワンフレーズでだと!!!」


 「くっ、これがSランク賞金首の実力か!!! とてもかなわね。仕方が無い、魔法カード【魔獣からの脱出】を、ぐえっっっ!!!」


 「喉、右肩、左肩に三段突き! 突いた点からそれぞれ三角形を描きえぐりとる技、三段突きの進化版ハイエンド、【三段抜き】だ。成功すれば音声発生が不能となり必殺技、カード発動と魔法発動が数分間使用不可となる!!!」


 そう青青森に技の解説をくれてやると私に言ったのと同じように清水谷君が青青森を恫喝する。


 「知らなかったのか、オレと戦って逃げるには最低でもレベル200は必要だよ」


 「さあ、プレイヤーキルの時間だ!!!」


 「いっ、いやだ!!!死にたくない」


 青青森も赤秋田も、もはや戦意はなかったが清水谷君は容赦なかった。必死に逃げようとする青青森はもはや武器すらないのだろう。最後には地面に転がっていた石を投げつけて清水谷君に抵抗していたが先ほど剣による一撃がダイレクトに入り絶命した。

 赤秋田は青秋田との戦闘を最後まで目撃した結果、恐怖によって動くことすらできなかったのだろう。抵抗すら行わず首をはねられた。

 いくらなんでも生身の人間のプレイヤーをあそこまで惨殺しなくとも…助けてもらったという感謝とあそこまで陰湿に殺さなくてもよかったのではないかという理性による判断で頭がぐしゃぐしゃになる。

 そして、あの2人に変わって、また清水谷こいつも襲ってくるんじゃないかという圧倒的な恐怖のせいで誰も清水谷君に声をかけることができなかった。

 しばらく重い沈黙が続いたが私は意を決して清水谷君に声をかけた。


 「えっと、ありがとう、清水谷君…助けてもらっておいてなんだけど、なにも殺すことまではなかったんじゃないかな。ほら、素人目に見てもレベル差は明らかだったんだし、殺すことなく無害化することとかはできなったのかな」


 「非現実ゲームの中の殺しがなぜ悪い?」


 清水谷君が真顔で私に質問してきた。


 「俺はこの世界のレッドギルド、殺人工房プレイヤーキルクラフトの一員だぜ。オレに刀を向けたやつは例外なく殺す」


 私は二の句がまるで紡げなかった…またしても重い沈黙があたりを包むといつの間にそこにいたのか軽鎧を着た女が清水谷君に向かってこう言った。


 「見つけたわよ、ショウ」


なんとか更新できたぜ…もしかしたら次回あたりから更新時間を変更するかもです。

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