第898話 コンビニに行くためのパーティーメンバーは? ⑥
「ならば、決まったな。春日井とは国と国との小さな関係を論じる間柄ではない。この世界の行く末そのものについて、論じる間柄だ。どちらが重要かは語るまでもない」
そうコルベールに告げると玉座から立ち上がり、謁見室から出ていこうとする。
「行くぞ、春日井。こんなところでは落ち着いて話もできぬ。早く、来い」
コルベールの射殺すような視線を浴びながら、私達は謁見室を後にする。
謁見の邪魔をしたのは私達だが、退室を決めたのは我孫子だ。
文句は我孫子に言ってほしいものだ。
帝城内をしばらく歩き、到着したのは帝城の最奥。
そこが皇帝の私室になっていた。
フロア一角がまるまるプライベート空間になっており、我孫子に伴侶がいるなら大奥と呼ぶべき区画なのかもしれない。
案内された場所はもちろん空室で、帝国の権勢とは裏腹に素朴なテーブルが一脚、置いてあった。
誰もいないのなら遠慮はいらない。
勝手に座り、最も気がかりだったことを尋ねる。
「本当に中座してよかったの? 謁見って民から情報を集めるための重要な施策でしょう」
「なんだ、そんなことをまだ、気にしていたのか…存外、つまらぬことを気にする女なのだな」
苦笑いをしながら、我孫子が手ずからコーヒーを入れてくる。
ヨウメイは恐縮しながら、受け取り、メッテルニヒは慣れた手付きで茶請けを物色している。
何度もココへ来たことがあるのだろう。
「どうせ、ご機嫌伺いにすぎぬ。必要な情報は多方面から入ってくるし、それを精査する臣下も揃っている。必ずしも謁見という形に拘る必要はない。我が帝国は【皇帝】がいなくとも、立ち行くのだ」
自身の存在意義を全否定する言葉なのに我孫子は満足そうだった。
自分がいなくても回るシステムを作る。
それが管理職の仕事だと聞いたことはあったが我孫子がやっているのはまさにそれだ。
帝国の統治は既に完成の域に達しているのかもしれない。
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