第892話 清水谷祥との別れ⑤
その後、祥君とは会っていない。
電話をしても無視され、現実でも会っていない。
どうやら登校自体を止めてしまったようだ。
私と会わないためにそこまでするかと呆れを通り越して怒りすら感じる。
だが、【プレイヤーキルマイスター】が本気で姿を消せば一般人が探し出すことなど到底不可能だ。
もう二度と祥君と会うことはできないかもしれない。
などと感傷にふけってみたが、私がギルド解散に同意することなど絶対にない。
脱退も許さない。
たとえ、最深階層到達点にまで逃げたって追いかけてやる。
だが、今はまだ、その時ではない。
今は冷却の時だ。
幾つかの手段を用い、祥君を探し出せたとして私には彼を説得する言葉を持たない。
私の、私達の実力を上げるのはもちろんのことだが、彼のバックボーン調べる時期なのかもしれない。
渚とパーティーを解消し、私に出会うまでに何があったのか?
最深階層到達点で何を見たのか?
姉である【泣かない乙女】との関係は?
忌名である【プレイヤーキルマイスター】の称号をどうして手に入れたのか?
そのあたりに祥君と仲直りするためのキッカケがあるような気がする。
故に今は足場を固める。
今、私がしなければいけないのは環境整理だ。
帝国との戦争では自らの実力不足を痛感した。
早急に鍛え直さなければならない。
これは比較的簡単だ。
渚やエミリー、都洲河、フェビアン、黒嵯峨直弟子、Z組の連中など、模擬戦闘の相手に事欠かない。
誰に頼んでも、二つ返事で受けてくれるだろう。
なにより【修羅王】である羅喜がいる。
彼のフィードバックを受けながら、模擬戦闘を行えば格段に強くなれるだろう。
次に、【領地経営】。
帝国と戦争してしまったせいで、何もかもが中途半端になってしまったが抜本的な立て直しが必要だ。
一応、戦勝の立役者なわけだから、ネブラスカも少しは手加減してくれるといいんだが。
【フォリー・フィリクション・フロック】を今後、どうするかも考えなければならないし、厄介な我孫子との契約もある。
やはり、早々に現地入りして、首脳陣と相談する必要がある。
ああっ、面倒事が多い。
そもそも、どうして【領地経営】をする羽目になったんだっけ。
考えねばならないこと。やらなければならないことが目白押しだ。
本当にこれら全ての厄介事を終わらせ、祥君を探し出すことなど、できるのだろうか。
弱気がじわじわと脳内を侵食してくるが心はまた別の考えに支配されていた。
それほど、労力をかけずとも祥君とは近いうちにまた会える。
それも特大の面倒事がセットになって。
そんな確固とした予感があった。
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