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第891話 清水谷祥との別れ④

 「違う。これが最善の道なんだ。最良の方法なんだ。俺は間違っちゃいない。間違っているのはこの世界の価値観のほうだ。俺がやっているのはシステムにだって認められている正規の手順だ」


 祥君はまるで、おもちゃ売り場にいる駄々っ子のように声を荒げ抗議する。

 とても、聞くに堪えるものではない。


 「平行線だね。答えは出ない。そもそも、それだけ感情的になっていたらまともに話なんてできないよ…」


 何が彼をここまで駆り立てるのか。

 これまで触れてこなかった彼の核心に迫る時なのかもしれない。

 そのためにも、互いに一度、頭を冷やす必要がある。


 「真澄さんも俺に付いてこられなかった。誰も彼もが俺を置いていく。俺は…」


 だが、そう考えたのは私一人だけだった。

 祥君は私を置き去りにして、自分の世界に入り込んでいた。

 そうして次々と思考を加速させている。

 私が強いて頭を冷やそうとしているのに彼はドンドン思考をヒートアップさせていく。


 「祥君、とにかく落ち着いて…」


 正直、大事な話をしようとしているのに、聞く耳持たずの状態はイラつく。 

 それでも、祥君がここまでテンパるのは予想外だった。

  

 「解散だ」


 突然、祥君は主語を付けず、結論だけを述べた。


 「へっ!?」


 主語がなくとも、中身は分かる。

 それでも間抜けな返事しかできなかった。

 祥君がその言葉だけは絶対に言わないと心の底から信じていたからだ。


 「ギルドを、いや、パーティーを解散しよう。やはり、群れても得るものなんてなかった。ただ、迷いを深くするだけだ。そんな時間があれば、雑魚狩りでもしてた方がまだ、生産的だった」




 読んで頂きありがとうございました。次回の投稿もなんとか頑張ります。

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