第890話 清水谷祥との別れ③
正直、情報が断片的過ぎてよく分からない。
だが、これが核心に触れる情報であることは分かる。
今、彼を止めることはできない。
「なら、ゲームクリアを諦めるのか!? 否!!! パーティーを組んで突入するから不必要な諍いが起きる。個の力の究極。絶対的な力。超常の力を得て、単騎で奴を撃破する。それが俺の出した答えだ」
まるで自分を洗脳するかのような言葉だ。
そう思い詰めないと、何かが壊れる。
そんな必死さが伝わってきた。
「そのためだったら、何だってする。仲間も売るし、部下も見殺す。超常の力を手に入れられるのは唯一、ただ1人だけだ。なのに、あんたが現れた。俺は真澄さんを…」
祥君はそこで我に返った。
これまでの激情は鳴りを潜め、淡々と語っていく。
「真澄さんは危険すぎる。これほどの短期間でトッププレイヤーの一人となり、未だ底が見えない。このままいけば、オレが真澄さんを…」
「PKするかもしれない?」
苦悩する祥君に代わって私が答えを告げる。
「支離滅裂だよ。本末転倒って言ってもいい。パーティーを助けるために、仲間を売る。大切な人を守るために、大切な人を傷つける。やってることが矛盾だらけだ。分かってやっているの、祥君?」
「…」
祥君は答えない。答えられないのだ。
「その矛盾の先には破滅しかないよ、祥君。大切な誰かを守るために強くなった君が大切な誰かを殺してしまったら、君はその矛盾に取り殺される」
私に確たる思想なんて上等なものはない。ただ思いついたことをペラペラと言の葉にのせているだけだ。
だが、外してはいないという絶対的な確信があった。
「前から思っていたけど、祥君、君は今ではもう、無理をしてPKをしてるんじゃないかな? 互いの全身全霊を賭けたPKなら、まだいい。人間同士の本気の勝負の結果だ。質の高いPKが莫大な経験値を与えてくれる。これは理解できる。けれど、今では君の方が圧倒的に優位だ。君と互するプレイヤーなんて滅多にいない。そうなると真剣勝負だったPKが雑魚プレイヤー狩りに変わってくる。けれど、質の低いPKなんてのはただの作業でしかない。今の君は怨嗟の人柱にまで落ちてしまったんじゃないのか」
読んで頂きありがとうございました。次回の投稿もなんとか頑張ります。
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