第889話 清水谷祥との別れ②
「そういう話をさらっとできるようになってる時点で、俺の庇護はいらないんじゃないかな…」
「そう庇護はいらない。私は祥君の隣に立ちたいんだから」
「…」
同じことを祥君に言ったのはこれで2度目だ。
それでも彼はどこか嬉しそうだった。
傍目にもイガイガして、近寄り難かったのが氷解した。
彼の調子も戻ったことだし、ここはもう一席ぶっておくか。
「この調子で最高のパーティーメンバーを組織し、ゲームクリアに臨むよ」
だが、その台詞を吐いた瞬間、彼の調子は一変した。
祥君から【プレイヤーキルマイスター】に戻ったかのように。
「このゲームの攻略が進まない理由、いや、現在、攻略が停滞している理由を真澄さんはどれだけ知ってる?」
重い重い独白だった。
まるで、死刑囚が自らの罪を告白するかのような、絞り出すかのような声で祥君は告げた。
「…現時点での最深階層到達点、その仕組はあまりに悪辣だ。トッププレイヤーパーティーでなければ、到達できない。だが、到達した最深階層領域は内でパーティーメンバー同士が殺し合うバトルロイヤルモードが取られている。ただレベルが高いだけのパーティーでは到達することすらできない。練磨に練磨を重ねたトッププレイヤー同士が完全に呼吸を合わせ、一つの生き物のように動く。そのレベルのパーティーにまで仕上げないと奴は倒せない。そうして、奴を倒した後、パーティー内でバトルロイヤルだ。俺達はそこで引き返した。バトルを始めることすらできなかった。あれほどの大規模攻略など、もう不可能だと分かっていた。俺達がその場を離れたら、奴がリポップする。それも分かっていた。俺達はもう一度、奴に勝つことはできない。それも分かっていた。けれど、俺達にはできなかった…」
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