第88話 私を助けてくれる人の悩み
「今のは我が国に居座っていた対悪竜戦用の剣技。何百もの精鋭が悪竜の炎に焼かれ、それを嘆いた何代か前の剣王が編み出した技です。よもや小娘相手に使うことになろうとは思いませなんだぞ」
「私はれっきとした人間だ。使うなら人間用の技だけにしてもらいたいもんだ」
会話が成立したせいで互いにタイミングがずれたのだろう。私達は共に距離をとり体勢を立て直した。
「その太刀筋。ロンバルディア剣王技ですか。もともと、エクシード流剣王技は初代ロンバルディア流剣王の弟が開祖。始祖剣と合間見えることができようとは、望外の喜びです。ロンバルディア剣王技は剣に魔法の効果を付与させ、剣士であっても魔法使いのように戦えることを目的とした剣。対してエクシード流剣王技は対竜、対冥竜王に特化した剣技。聖属性だけに特化し、対冥力を高め、竜殺しに特化した剣です。時代の流れの中、ロンバルディア剣王技は世界の隅々にまで広まり、対してエクシード流剣王技は本懐も遂げられず大陸の隅で細々と継承されていく。若い頃はエクシード流こそが最強。ロンバルディア剣王技など魔法剣士の劣化版にすぎぬ。常々、ロンバルディア流と対戦し、エクシードの竜殺しの剣こそが最強だと証明したいと思っていたものですが。この歳でその願いが叶うとは嬉しいものです」
「生憎、私の剣はロンバルディア流の異端だ。剣王の目録はもらっていない。あんたの弟子は私の剣を信念のない邪剣とまで評したぜ。とても、あんたの期待には答えられそうにないんだが…」
「さて、剣士に目録といったものがどれほど意味があるのやら、その実力を持って剣王を名乗ればよいと思いますが」
イチイチ癇に障る言い方をするやつだ。エミリーといい、RDHといいい、私が殺したハンザ・ロンバルディア剣王といい、私の剣に何を求めているのだ。剣術など単なる戦闘術だ。強さが一定水準を超えれば剣王を名乗る。それでいいではないか。
「ならばなぜ、私に【剣王】の称号がつかない」
私は思わず、声を荒げ反論していた。なんだかんだと私は剣王の【称号】が欲しかった。
魔導剣士王などという中途半端な存在ではなく【魔導剣王】という称号が。しかし、どれだけレベルを上げようとその称号が付くことは無かった。
NPCの他の剣豪に尋ねても剣に品がないだの、剣に王器が感じられぬだの要領を得ない答えばかり返ってくる。
「それこそ、心の問題でしょう。あなたには剣王を名乗れない何かがある。それを神がご存知なのでしょう」
「その神にダメだしされたんだが」
そう、極めつけはRDHだ。
奴は私を師匠殺しと罵った。神である奴がだ。神に認められなけば永遠に剣王の称号など得られないのではないか。もはや私が剣王の称号を得るのは永遠に不可能なのではないか。私は失望に満ちた顔で答えていた。
「我々があがめるのは剣神と己の腕のみでしょう。そんな神がいるのなら斬ってしまえばいいだけのことです」
私は戦闘中にもかかわらずその言葉を聞いて思わずにやけてしまった。なんだ、答えは簡単だったんじゃないか。そして私と同じ考え方をもった剣王がここにもいるじゃないか。
「ずいぶんと奇矯な剣士なんだな、剣王は。殺すのが惜しくなってくる」
感慨をこめて呟いた感想は思った以上に穏やかな声になって出ていた。さっきまであった、使命感や報音寺との約束を果たすという気持ちが霧散していく。
「剣士として当然の心構えを申しただけですが…若人を導くのは老人の役割です。あなたの心の支えが取れ、さらにその剣の鋭さが増すというなら私としては本望です」
グロスもまた、快活な表情で私に笑い返す。
「断言できるよ。あなたがいたからエミリーがエミリーになれたんだ」
私は深呼吸し気合をこめて構えなおし剣をグロスに向ける。先程よりさらに集中力が増しているのが分る。これなら今まで使えなかったあの技も使える気がする。
「ありがとう。剣王グロス・アシミレイト。だからこそ、ここから先はその感謝を剣にて現そう」
私はグロスの首を刎ねるべく駆けた。
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