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第879話 阿来津&雨佐美VS都洲河&春日井㉟

 「あなたは多画城さんと出会った時点で夢を諦めるべきだったのよ…あなたが本当に必要としたのは寄り添って生きてくれる人。親類縁者に裏切られ、人間不信に陥り、だから一人で生きていけるだけの力、お金や、セカンドワールドオンラインの中での確固たる地位がほしかったんでしょうけど、それはあなたを幸せにはしないわ。現に今、その2つを限りなく手に入れているのにあなたは楽しそうには見えない。苦痛に耐え、常に何かに苛立っている」


 雨佐美は未だ私への殺気を抑えようともしていない。

 同時に、私に対して攻撃する素振りすら見せない。

 ずっと私の言葉を聞き入っている。

 

 「たとえ、このまま、あなたが首尾よく八束の生徒会長の地位を得たとしてもあなたは満足しない。再び、より大きな依代を目指して果てなき野望の荒野を進むことになる。けれど、あなたが進むのは導なき荒野。いずれどこかの時点で疲れ果て、必ずその足は止まる。誰の助けもなく、果なき荒野を踏破することなど不可能なのだから」


 人は独りでは生きていけない。誰にも心を開かず、事を為すなど不可能なのだ。

 だが、雨佐美のような天才は、なまじっか才能がある分、誰にも頼らず生きれてしまう。

 それは幸運なことなのか、不幸なことなのか。

 困難に直面しても常に自力で正解に辿り着く。

 しかし、それを永久に続けることができるのか?

 もし、正解との間に僅かなズレがあったとしたら…

 そのズレが次第に大きくなったとしたら…

 いつかそれは致命のズレに繋がるのではないか。


 「今ならまだ間に合う。摩耗しながらも、まだ人の感情が残っている今なら。あなたが為すべきは私の道を阻むことではない。今すぐログアウトし、多画城を迎えに行くことよ」

 

 「よくも、まあ、そうペラペラと自分に都合のいい展開を考えつく。大体あれからもう一年以上経っているんだぞ…今更、間に合うわけがない…」


 「女の勘として言わせてもらえば、まだまだ間に合うとは思うけどね。自分の夢を捨ててまで、嫌いな奴の身代わりになんてならないだろうしね」


 「だとしても、俺はお前との決着を付けずに前に進むことなどできん。お前を倒した後、ゆっくりと迎えに行かせてもらうさ…」


 「ふん、少しはマシな男になったわね。でも、私としては多画城さんに悪いからね。今すぐあんたをPKして、オフラインに送って上げるわよ」


 読んで頂きありがとうございました。次回の投稿もなんとか頑張ります、

 ブックマーク、感想、評価、メッセージなどありましたら、何でもお待ちしております。

 皆様のポチっとが私の創作の『めでたい。しかし、悲しい。嫉妬か? それとも置いていかれたって焦りか?』(意味不明)ですので何卒よろしくお願いします。


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