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第872話 雨佐美禎継の戦う理由㊿

 「ふん、今さら鮮度の落ちた分身で時間稼ぎなど…正攻法ですり潰せばじきに、落ちる」


 斧手良はそう呟くと斧槍ハルバートを一薙させる。

 それだけで、府天間の分身体は次々と消えていく。

 命令式自体が単調になっているが分かる。

 やはり、府天間にはもう、余力がないのだ。

 そう思った瞬間、斧手良の足元から府天間が奇襲をかける。

 だが、斧手良に動揺はない。

 

 「やはり、そう来ると思っていたぞ。真上か真下か。思考の死角を突くのがお前の基本戦術なのだろうが、バレてしまえば造作もない。さらに言えば、お前の攻撃は軽すぎるのだ!!!」


 斧手良は避けようともせず、強引に府天間を蹴り飛ばす。

 無理な態勢からの府天間の攻撃ではダメージは通らない。

 そう、読み切っての攻撃だ。

 斧手良の防御力は本職のシールダーと比較しても何ら遜色はない。

 ガチガチのフルアーマーで構成されている。

 故に筋力に劣る【忍び】の攻撃を受けたとしても、致命傷にはなり得ない。

 その慢心が足元をすくう。

 蹴り飛ばした府天間の身体が緑色の固形物へと変わる。

 いや、固体ではない。液体か!?

 どろりとした粘着質な液体が斧手良の足に絡みついている。

 毒か?

 

 「くっ。なんだ、これは??? 取れん…」


 斧手良は手で強引に取ろうとしているが取れない。

 それどころか、手にも粘着質な液体がへばりついている。

 そして、心なしか液体の量が増えている。

 

 「それは毒ではござらぬよ。拙者の切り札の一つ。怪アイテム【ドロリーノ三世】にござる。効果は【粘着】と【増殖】。【ドロリーノ三世】の冬眠状態を解除したものは【増殖】の苗床となって、子孫の反映の礎になるでござる」


 「ふざけたことを。ぬああ…」


 なおも、強引に緑色の液体を引き剥がそうとするが、全く取れない。

 いや、正確には僅かな量だけ落とせたが、落とした分が戻ってくる。

 まるで自分の意志を持っているかのように。


 「苗床が弱っては話にならない。だから、【ドロリーノ三世】は決して苗床を攻撃しない。それどころか、苗床の健康を保つため、回復すら行ってくる。苗床となる者は空腹すら感じない。生命活動に必要なことは全て【ドロリーノ三世】が代行してくれる。苗床が諦めなければならないのは移動の自由だけだ」



 読んで頂きありがとうございました。次回の投稿もなんとか頑張ります。

 ブックマーク、感想、評価、メッセージなど何でもお待ちしております。

 皆様のポチっとが私の創作の『とある勝負でボロ負けした。なんか勝てる気がして。負けても軽傷ですむだろうと根拠もなく信じていたらクソ負け。重傷だった。どうしたものか…』(意味不明)ですので何卒よろしくお願いします。


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