第87話 私を助けてくれる人(女勇者)の実力
高位レベルのNPC、エクシード流剣王グロス・アシミレイトか。
剣王と戦うのはこれで二度目。純粋な剣技で勝負してもたぶん負けるだろうな。さらに倒さねばならないが殺してはダメ。縛りが大きい。
私はグロスを見ながら心中でそう確認した。勝ったとて得るものはないが負ければ失うものは多い。
エミリーだけでなく、私のレベルもだ。負ければまた、地道なレベル上げだ。獲得経験値が2分の1で数ヶ月プレイするような苦行は遠慮したい。だったら使うか、とっておきを!
「ベイルカードを伏せ、そしてHPの10分の1を捧げ魔法カード【哀れなる決闘者の牢獄】を使用」
まったく、真澄といるといつも赤字だ。いつか、彼女が貸しを返してくれる日はくるのだろうか。いや、絶対返してくれない。しかし、憎まれ口を叩きながらそれでも私の心は満たされているんだろうな。これからずっと。そんな想像をすると思わず笑ってしまった。
緩むのはまた、今度だ。今は奴を打倒することだけを考える。
私がジリジリと間合いを詰めるがグロスは特に構えず自然体でこちらを見ている。既に両者、己の剣の間合いの内のだが動きはない。ベイルカードを警戒しているのか、あるいはカード使いとの戦闘経験すらないのかも知れない。生憎とカードには効果限界時間がある。悠長に構えてはいられない。
「翠嵐抜刀斬」
風をまとった私の最速の剣技で横腹を狙ったがグロスは難無く剣で受けた。普通の敵ならたとえ受けられても膂力で武器ごと破壊するがそれも不可能か。レベル325の私の腕力は既にゴリラと腕相撲しても勝てるだけの数値なのだが。だが、私と力比べをするなどというのは愚かなことだ。
「ププロテン」
叫ぶと魔法が発動し、瞬間、私の筋力が2倍となる。
グロスの剣ごと筋力で投げ飛ばす。補助魔法【ププロテン】筋力が2倍になる便利な魔法だが効果時間が数秒なのが玉に瑕。しかし、こういった高レベル戦闘では使いようによっては意表を突くこともできるのだ。
グロスは方膝をついて着地した。今がチャンス。
「劫火炎熱斬」
使った本人も少ダメージを喰らう破壊力重視の私の切り札の一つ。こいつならたとえ剣で防御してもその剣ごと相手を火達磨にする。
「エクシード流剣王技・邪竜炎断剣」
グロスの不完全な体勢から放たれた一閃は私の炎を完全にかき消し、またも膠着状態に戻る。
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