第861話 雨佐美禎継の戦う理由㊴
フィールドに魔法をかける。
なるほど、妙手だ。
おそらく誰も研究すらしていなかったのではないか。
これまでも氷魔法を使い地表を凍らす。
炎魔法を使い大地をマグマに変えるといったフィールドの属性そのものを変える魔法は存在した。
しかし、あくまで副次的なもので、効果もそれほど高くない。
格上の反属性の相手と長時間戦闘を行うなど限定的な戦場でのみ有用だとされていた。
それすらも、高威力魔法を直接使う方が効率はいいとされていた。
よもや、フィールドそのものに極大の魔法をかけ、遠距離攻撃完全無効化などという異常現象を引き起こすとは…
「そこまで便利なものではありませんよ。発動に時間がかかりますし、これを覚える代価として防御系の魔法が一切、使えません。まさか、障壁すら張れなかったとは完全な誤算です。
系統:神を持つ者がいると効果も薄いようですし、聖域なんかでは発動もおぼろげです。きっと属性同士が干渉してしまうのでしょう。完全に一点特化のゲテモノです。誰かのサポートを前提とした弱者の能力です。けどまあ、いい金になるので不自由はしていませんが…」
同じ魔法使いとして、俺の心を読んだのだろう。
三文字が淡々と自分の魔法について解説する。
それにしたって、破格の能力だ。
デメリットを補って余りある効果だ。
この結果を体験してはそう評価せざるを得ない。
効果持続時間がどれほどのものなのかは分からないが、これだけの能力なら欲しがるものは山ほどいる。
「それではこれで、任務完了ですね…予想以上に難儀なミッションでした。かなり死人も出てしまったし、やはり、偶発戦闘は難しいですね。討伐任務の方が下調べができるのでありがたいです。今後はなるべく、そちらでお願いします。それでは、斧手良さん、私は落ちますので後のことはよろしくお願いします」
三文字が惚けた趣旨の発言を行い、そのままログアウトする。
納得だ。三文字はサベッジ・スピリット・セキュリティーの正規の社員ではないのだろう。
おそらく一戦闘幾らで雇われている傭兵魔法師だ。
コレほどの能力を持っているなら、フリーランスの方がはるかに稼げる。
他のメンバーが死を賭して三文字を守ったのも、魔法の発動成功だけが目的ではなく、彼女の厚遇も契約条項に入っていたのだろう。
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