第851話 雨佐美禎継の戦う理由㉙
弓納持が倒れる。
流石にヴァーディクト・スマッシュの連撃には耐えれなかったのだろう。
これで残りは4人。
数の上では、ほぼ互角だ。
「よくも、弓納持さんを!!!」
准騎士の田伊中が突っ込んできた。
多画城も府天間も今、弓納持を倒したばかりだ。
大技を連発し、すぐには動けない。
俺が的になるしかない。
広域殲滅魔法の構成は維持しつつ、前に出る。
「キエエエエエェ!!!」
渾身の力を込めた一刀が叩きこまれる。
顔面を狙った正確な一撃。
きっちりと殺しにきている。
だが、俺が常時展開している魔法障壁を破るほどの威力はない。
田伊中の剣は大岩にでも当たったかのように弾かれ、構えを崩している。
俺は薄ら笑いを浮かべながら、田伊中を見つめる。
【障壁破壊】を持っていないのだろう。再び狂ったように剣を振り回してきた。
このレベルの攻撃なら、数分は耐えれる。
それだけの時間があれば、多画城も府天間も十分に回復するだろう。
このまま囮役を続けるのが正しいが…一方的に攻撃を受けるのも癪だ。
「【ペブル】」
少ない魔力で、できる最大限の嫌がらせをする。
使ったのは【石化】の魔法。
全身石化すらできない初歩の石化魔法だ。
だが、魔法抵抗力の少ない田伊中に対しては十分、有効打になりえる。
両腕の肩から肘までを石化し、関節可動部を完全に封じた。
石化解除のポーションを取り出したはいいが、患部にかけられないのが哀れみを誘う。
たまらず、藤木谷がまるで介護をするかのように、【石化解除】を行う。
俺はその様子を黙ってニタニタと笑って見てやった。
すると射殺すような目で田伊中がこちらを睨んできた。
これで田伊中の意識は完全に俺に向いたはずだ。
注意を俺に向けるのが目的だったが、やり過ぎたかもしれない。
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