第85話 私を助けてくれる人(ガンナー)の実力
「剣王を除いたあの283人を全員か?」
私は耳を疑った。そして俄然、興味がわいてきた。
エクシード兵はそこいらの雑魚兵とは違う。敵兵のレベルこそ読み取れなかったが【エクシード流剣術初級】、【エクシード流槍術中級】、【エクシード流体術上級】など固有ステータスを持っている兵がほとんどでおまけに回復術士もいる。
彼ら全員を絶命させるわけではなく、たった一人で行動不能に追いやるというのだ。
それは並大抵のことではないとはっきり分っていたからだ。一人、二人行動不能にしてもすぐに回復術士が回復させ戦闘に復帰するだろう。ならば先に回復術士を狙えばいいかといえばそうはいかない。あの剣王やブロッカーが私達の進撃を阻みエクシード兵達はそこへ集中攻撃をかけるだろう。
しかし、同時にこいつならやるだろうなという確信もあった。レベル400を超えるということはそれほど困難なことなのである。
私とて小学の頃から毎日ログインし、懸命にレベルアップに努めているがレベル300代まで行くと遅々としてレベルが上がらない。一度、戦闘で死んでしまうと次にレベルがあがるまで獲得経験値が半減してしまうから無茶ができないのだ。
多くの経験値を得たければ死のリスクをとって深層にももぐり戦うしかない。それが嫌なら安全マーチンをたっぷりとって浅層で戦うしかないだろう。
私は後者だった。経験値を稼いだ上で絶対に死なないレベルまで到達してから深層にもぐるのだ。
たった一度の失敗で1年間の苦労を水の泡に無にする博打じみた前者の方法は馬鹿げている。しかし、その馬鹿げた方法を取らねばレベル400越えには届かないと最近分ってきた。
レベル400のプレイヤーは思考の次元すら我々と異なるプレイヤーなのだ。わずか一度の失敗も一年間一度もしないぐらいの異常な精神で無ければば彼らには届かないのだ。
「もちろんだよ。じゃあ、決まりだね」
報音寺はまるでピクニックの最中のような陽気で呟いた。
「しかし、独りでこんなに戦闘の矢面に出るのは久しぶりだな」
周囲はエクシード兵の包囲が完了し、私達に向けて全方位攻撃が始まっている。私がまず、目の前の2人を斬って背後の敵に対する活動空間を作ろうとしていると報音寺は銃口を天にかざしそう叫んだ。
「ライトニング・スタン・ショット×284」
その瞬間、銃口から284条の光を発しエクシード兵に向かって飛んでいった。光を浴びるとみな意識を失った。何人かは避けたが自動追尾でどこまでも追いかけ、ついには光を浴びて倒れる。
しかし、わずか3名攻撃が効かなった。あの隊長格の男と剣王と髭面の男だ。隊長格の男は光を斬り、剣王は光に耐えた。髭面の男は自動追尾を脚力で振りきりまっすぐこちらに向かっている。
「2人逃した!」
報音寺はそう言うと凄まじい速度で髭面の男の下に迫り、銃床で相手のコメカミを殴り昏倒させた。しかし、その技後硬直を狙い隊長格の男が必殺技を放とうとしている。
「エクシード流二段ぎ!?」
「ライトニング・スタン・ショット・フラッシュ・タイピング」
報音寺がそう言うと他のエクシード兵と同じように隊長格の男も倒れた。
今、一体なにをしたのか…
私には銃口すら隊長格の男に向いておらず報音寺が必殺技名を叫び、指を動かしただけにしか見えなかったが。
「はあ~もう、くたくた。じゃあ、後はまかしたよ」
報音寺は大の字になって悠々と横になった。
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