第844話 雨佐美禎継の戦う理由㉒
府天間が先行し、多画城がピッタリ後をついていく。
府天間の【気配断ち】は神がかっており、見えているのに見落とすレベルだ。
【無音走行】も併用しているせいで、さらに見つけくい。
フレンドリーファイヤに気をつけなくては。
(【マテリアライズ アブソリュート レイ】)
俺は俺で先程と同じように無詠唱で不意を突く。
狙ったのはシーカーである藤木谷。
装甲が弱く、【マテリアライズ アブソリュート レイ】が急所に当たれば瞬殺できる。
だが、先程と同じように斧手良が射線に入り確実に防いでくる。
達人者級のブロッカーを相手に奇襲は不可能。
ならば、これはどうだ。
「オブセッション・プレーグ・フレイム」
火球が大志万の頭上を飛び越え、放物線を描いて、藤木谷を狙う。
藤木谷は三文字の手を取って回避。
やはり、そうか。
今、藤木谷は【影潜行】を行わなかった。
影に潜んで、俺達の隙を突くのが【シャドウ・シーカー】の基本戦術のはずなのに。
おそらく三文字の護衛が藤木谷の役割なのだ。
先程の妙な違和感にも納得がいく。
三文字は【障壁】を張れないタイプの魔導師なのだ。
現代戦で【障壁】すら張れないタイプの魔導師がまだいたとは驚きだが、その分、攻撃魔法だけに極化しているのだろう。
お荷物を抱えても、なお、余りあるメリットが三文字にはあると考えて間違いない。
その証拠に、彼らの顔に澱みはない。
守って当然という気概すら感じる。
いや、それは正確ではないか。
どちらかと言えばルーティンをこなすような…
現に府天間と多画城が切り込んでいるが、陣形すら乱せていない。
連携を崩し、撹乱させているつもりだが、むしろ、こちらが攻撃すればするほど落ち着きを取り戻しているような…
新手や奇手で攻撃しているのに、使い古した戦術を使った時のような反応がある。
もしかしたら、これが奴等の必勝戦術なのかもしれない。
あえて取りに行きたくなるような囮を用意し、そこへ何重にも罠を張る。
脆そうに見えるが中の餌は絶対に取れない。
そうシステムが組んであるのだ。
これはそういうタイプの戦術なのかもしれない。
裏を返せば、三文字の魔法が完成するまで奴等は積極的に攻めてこないとも読み取れる。
奴等のパターンに嵌まる方が危険だ。
そう考えば、多画城と府天間は勝手に動く。
府天間の【同調通信】のおかげで思考の共有が為されいるからだ。
戦術思考と個人の雑感の区別が甘く、心の声がダダ漏れなのが玉に瑕なのだが。
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