第841話 雨佐美禎継の戦う理由⑲
(【マテリアライズ アブソリュート レイ】)
心の中で、定形化された魔法名を唱える。
俺の持つ最速最強の無詠唱。
肩口から光球が出現し、目にも止まらぬ速さで熱線が放たれる。
狙ったのは新人。まだ、戦闘開始の準備もできていない。阿呆面で多画城を見ている。
だが、無効化された。
見るからに戦士職の男が最小の動作で防いでいる。
ゼロ動作からの一撃であったのに不意すら突けていない。
動きもいいが装備もいい。【魔力霧散化】のコーティングが為されているのだろう。
あの装備を突破するには今、以上の攻撃が必要ということか。
しかし、ノーダメージにも関わらず新人の顔は青い。
動揺するのは勝手だが、表情に出すな。狙ってくれと言わんばかりではないか。
やはり、あそこが急所なのだ。
続けて府天間が新人に向けてクナイを投擲。
だが、クナイは後衛魔法使いに向かって飛んでいく。
おそらくあれは【曲射打ち】だ。
頭も体軸も新人に向いているのに、腕の動きだけで投擲方向を変える高等技能。
俺すらも発射方向にクナイが無くて、ようやく気付けた。
これが初めての共闘になるが府天間もいい性格をしている。
実に俺好みの性格だ。
後衛魔法使いの影から府天間が指摘していたシーカーが現れ、迎撃。
【影潜行】のような特殊スキルを持つなら、ギリギリまで潜んでおくべきだろう。
府天間の一撃は実に変則的な一撃であったが、致命の一撃でも何でもない、ただの投擲だ。
にもかかわらず、奇襲の優位性を捨ててあっさり姿を現した。
こいつら、レベルは高いが護衛戦闘のプロではないのかもしれない。
ならば、これも効くはずだ。
今日、ログインしてから、ずっと並行詠唱していた魔法を解放する。
「【極光朔夜天泣】」
魔法陣より降り注ぐ光の雨が多画城達を襲う。
雨粒一滴一滴に膨大な威力が込められる。
救出対象である多画城自身が消し飛ぶレベルの攻撃だ。
戦士職の男が守りに入るが、無効化できていない。
当然だ。この魔法が使える奴は世界に3人といねえ。
天より降り注ぐ恩寵を回避する術など有りはしない。
たまらず、多画城を拘束していた女がその場を離れる。
同時に飛び跳ねるように多画城が俺達に合流する。
そうして、俺に近づくと何故か、脇腹目がけて右ストレートをかましてきた。
きっちりダメージ判定が乗ってる。
「助けてくれたのは感謝だけど、もっとスマートな方法はなかったの! 危うく死ぬところだったんですけど!!」
多画城はいつも通り元気だった。
読んで頂きありがとうございました。次回の投稿もなんとか頑張ります。
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今年の投稿は今日で最後ですね。読んで頂いた方、本当に感謝です。一年間、延々と阿来津&雨佐美戦を書いてしまった。
来年は進めることができるのだろうか。
とりあえず、次回の投稿は1月2日を予定しています。正月を挟んでるけど、書けるだろうか。
なんとか頑張りたいと思います。遅れたらごめんなさい。
それでは、皆様、よいお年を!




