第836話 雨佐美禎継の戦う理由⑭
「俺の名前は雨佐美。見ての通りのはぐれ魔術士だ。ココにはあるプレイヤーの行方を調査しにやってきた。多画城という【魔法拳士】だ。心当たりはないか?」
半信半疑の状態で府天間に多画城の行方を尋ねる。
あまりがっつくと下手に見られる。
最低限度の情報だけを出し、まずは府天間の出方を見る。
「多画城殿ですか。多画城七実。B組出欠番号18番、校内序列は131番。弱くもないが強くもないB組近接攻撃担当の一角でござるな。面識はないが、有名人でござるからな、当然知っておるでござるよ」
すらすらとメモも見ずに答えていく。
どうやら、自分が調べてきた情報を開示するのが相当に好きな性格らしい。
実にイキイキと喋ってくる。
思惑も何もあったものではない。
警戒する方が馬鹿というものだ。
「特筆すべきなのは、プレイヤーとしてのスペックというより、オフラインでの境遇でござるな。彼女は多画城財閥の直系。いわゆる本物のお嬢様なのでござるよ。本来、八束のような歴史が浅く、得体の知れない学園に席を置く御仁ではござらぬ。最近、登校されておらぬのが気になるところでござるが…」
府天間は考えてこむような仕草をして、言葉を切った。
一方、俺はといえば、新情報が次々と出てきて混乱していた。
良家の令嬢ではないかと疑っていたがこうして他人の口から改めて聞くと、ショックが隠しきれない。
まさか財閥のお姫様だったとは。
いや、今はまだ府天間の情報を全て信じるわけにもいかない。
裏を取って、それから判断だ。
「それと【魔法拳士】にジョブチェンジされておったのは初聞きでござる。拙者の記録にもその情報はないでござる。拳が主体の純粋なインファイターで魔法の類は一切、使えないと思っていたでござるよ。なるほど、不登校の理由は秘密の特訓というわけでござったか。外でコレほどの逸材を見つけることといい、心に野心を持つ情熱的な性格をしておったのでござるな~」
よく分からない性格分析までしてくる。
「概略としてはそんなところでござるかな。他にどんな情報が欲しいでござるか? というよりも、雨佐美殿が真に欲しているのは情報ではないでござろう。本当に欲しいのは彼女の所在。どうやら彼女は今、教室にいるようでござるよ。良ければ案内するでござるが…」
府天間がとんでもない情報を提示してきた。
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