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第834話 雨佐美禎継の戦う理由⑫

 正面突破は愚の骨頂。

 見物客を装いながら、校舎周辺を偵察。

 だが、どの場所も外壁で仕切りがしてあるだけで容易く侵入できてしまう。

 セカンドワールドオンラインの中ではプレイヤーの身体能力はかなり強化してあるのだ。

 この程度の高さはレベル1のプレイヤーでも飛び越えられる。

 これは罠か!?

 本来、潜入任務などは後衛魔法使いの仕事ではない。

 そのせいで勝手がまるで分からない。

 これは行ってしまっていいのだろうか!?

 ええい、2度も3度もうろついていては逆に怪しまれる。

 行ってみるしかない。

 塀を乗り越え、開いている窓から侵入。

 周囲を見回し、何食わぬ顔をしながら侵入開始。

 この間、僅か数秒。

 ほぼ、始めての潜入ミッションとしては上手く行ったほうだと思うが…

 ここはハイランカーが集まる八束学園。

 考えが甘かった。

 目の前に黒装束の少年があぐらをかいて座っていた。

 思わず距離を取り、戦闘体勢を取る。

 

 「単独での侵入者とは珍しいですな…おまけに工作員としては素人同然、その割にレベルは不自然なほど高い…一体、この学園に何用ですかな、魔術士殿?」

 

 この黒装束、独特の口調。

 間違いなく高位の忍道系のプレイヤーだ。


 「拙者は府天間成清。この学園の本校舎の警備担当でござる。不法侵入の目的を聞かせてもらうでござる」


 問答無用で切り捨てられても、文句のないシーンだ。

 だが、府天間には咎める様子が一切無く、戦闘体勢にすら入っていない。

 純粋に疑問に思っているから尋ねているといった様子だ。

 

 「念のために聞くでござるが囮ではござらんよね。あなたクラスの魔術士を揃えられるパーティーなら拙者と同クラスの間者を偵察に放つはずだ。パーティーに偵察役がいない、もしくはパーティーではない。あなたが単身乗り込んで来ただけだけ。そう読んでいるのでござるが、肝心の目的がさっぱり分からない。そろそろ、何か喋ってもらえんでござるか?」


 何一つ喋っていないにもかかわらず、次々と看破されていく。

 この男、相当に頭が回るのか。

 こいつを倒すことはなんとかできると思う。

 だが、このクラスの忍が逃げることだけに専念すれば、追いつくことは不可能だ。

 敵地で奴の退路を断って勝利する。

 そんなことができるのだろうか。


 読んで頂きありがとうございました。次回の投稿もなんとか頑張ります。

 ブックマーク、感想、評価、メッセージ等あれば何でもお待ちしております。

 皆様のポチっとが私の創作の『歳を取るとシンドいことが多い。楽しいことが少ない。感情が減耗してるんじゃない!? なんてことを思ってしまった』(意味不明)ですので何卒よろしくお願いします。


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