第83話 私を助けてくれる人の男気
「あの呪い士の言うとおり本当にきたぞ!」
「ではやはり、ショウ様がエミリー姫をあのような状態に追いやったのか」
「許さん、エミリー姫の仇だ!」
「おい、誰か増援を呼んで来い。こんな数ではすぐに突破されてしまうぞ」
ログイン中の強化された聴力のおかげで目の前の兵士の会話がしっかり聞こえる。呪い士というのはRDHのことだろう。
どうやら、私達が再度、エミリーの奪還に動くのはお見通しのようだ。どんな口上を垂れたのかは分らないがどうやら私達がエミリーを壊したかのように王国の兵士にふれまわったらしい。
前回とはうって変わって兵士達が私達に敵意を剥きだしにしてくる。祥君の実力はこの国の人間が一番よく知っているはずなのにどの兵士も引こうとはしていない。
よほど、兵士から愛されているのだろう、エミリーは…
「救国の英雄ショウ様とエミリー姫の御友人真澄様とお見受けします、現在、お2人の入国は禁じられております。速やかにお帰り下さい」
体長格の男が一歩前に出て私達にそう告げた。口調こそ紳士的だが、武器は携帯したままだ。私達が帰らなければ即、武力行使に及ぶつもりなのだろう。その目に不退転の覚悟が見て取れた。
「報音寺。一対多数と一対一どっちが得意だ」
渚が兵士達の方を向いたままそっと報音寺君に問いかける。
「そりゃ、銃を使ってるんだから一対多数かな」
「あまり時間をかけてクエストの初期化がなってしまっては取り返しがつかん。わざわざ、エクシード王国に逃げ込んで雑兵を煽ってるのは時間稼ぎだろう。この場は私と報音寺が引き受ける。ショウと真澄はエミリーを救いに王城に行け」
「けど…この人数を相手に2人って…」
エクシード兵はざっと見ただけで200人か、それ以上いる。それをたった2人で相手にするのはいくら渚といえども無謀ではないのか。
「私達のことを想うならなんとしてもこのエキストラクエストを成功させろ。私はまた、お前達と3人でエキストラクエストをやりたいんだ」
渚が私に笑顔を向けた。その笑顔はやけっぱちになった人間のそれではない。純粋に役割を全うしようとする職人のそれだ。
「雹澪飛沫斬!」
渚がそう叫ぶと氷をまとった剣閃が兵士達に直撃し隊列が乱れる。
「行け、真澄、ショウ!」
その隙を見逃す訳なく、祥君が乱れた隊列に向かって突撃する。
(頼んだよ、渚!)
内部通信(気)で渚に向かって叫び私も彼に続いた。
読んで頂きありがとうございました。ギリ書き終わりましたね。これで寝れるぜ。明日の投稿は未定です。ブックマーク、感想、評価、メッセージなどあればお待ちしております。何卒お願いします。




