第829話 雨佐美禎継の戦う理由⑦
こうして、メガトロサウロスの討伐は完了した。
終わってみれば、あっけない。
森にいたメガトロサウロスを全て討伐していた。
パーティーを組んでみると、改めて分かる。
多画城の戦闘偏差値は極めて高い。
決して、俺へ攻撃を許さず冷静かつ正確に囮役をこなした。
二手、三手先を常に読み、俺の魔法に対する射角まで計算していた。
俺は誘導されたメガトロサウロスを射るだけでいい。
後衛上級職の理想系である、固定砲台に徹することができた。
練達の前衛上級職とはここまでできるものかと評価を改めていた。
気付けば、俺の多画城に対するわだかまりはすっかり消えていた。
俺が多画城に体術の指導を申し込むのは自然な流れだった。
多画城の道場に入門して数日が経つとさらに色々なことが見えてきた。
まず、この女、戦闘偏差値は極めて高いがそれ以外はからっきしなのだ。
しっかりしているようで抜けている。
簡潔に言うと、単純な足し算引き算すらできない。
そもそも損得勘定ができていない節がある。
俺が多画城の道場入門を申し出た時も二つ返事で受け入れた。
これまでの経緯を考えれば、すぐにYESとは言えないはずなのに。
悩んだ俺の方が馬鹿みたいだ。
そんな性格のせいで、情報収集などは苦労しているようだ。
どうやら普段は別の人間にやらせているようだ。
これらの材料から俺は彼女が良家の子女ないかと推測している。
その推測を前提に彼女の所作を観察してみれば、ひとつひとつの動作に気品すら感じる。
だが、だとすれば、また疑問が湧いてくる。
彼女はどうしてこんな深層にまで潜っているのか。
多画城のレベルは少なく見積もってもレベル300は超えている。
良家の子女がどうして、ここまでのレベルを為したのか。
日常で使うにしてもレベル30もあれば、十分だ。
レベル50で中毒レベル。
レベル100を超えてるなら、もはやプロの領域だ。
そして、レベル300。
ここに至るには、日常の全てを犠牲にしてフルダイブに望まなくてはならない。
それでもレベル300に至るかどうかは適性次第だ。
努力だけでは絶対に不可能なのだ。
運、努力、情報収集を高い次元で成し遂げなければ、成功しない。
自身の適性を正確に理解し、膨大な量の経験値稼ぎを最も効率よく行わねばならない。
彼女にはそれができるだけの世間知が欠けているように思うのだ。
よって、多画城はなにか特殊な環境に所属しているのでは? という仮説にたどり着く。
乗馬倶楽部のようにセカンドワールドオンライン倶楽部にでも所属しているのかもしれない。
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