第823話 雨佐美禎継の戦う理由①
雪が降っている…
いや、冷たさを感じない。
ならば、これは雪ではない。
触れれば、消滅する粒子が雪のように降っていた。
粒子が白かったため勘違いしたのだ。
気付けば、辺り一面、白で構成された世界に立っていた。
明らかに先程までのフィールドと違う。
どういうことだ? 俺は春日井真澄と交戦していたはずだが…
考えられるのは春日井真澄の超級攻撃だ。
この様子からして、大規模幻術や精神世界への強制転移ではないはずだ。
超級攻撃は世界を創るという。
現に我孫子書記長の【皇帝の法】は事象の改変すら行う。
その支配権の中では過去現在未来を問わず、現象の全てが【皇帝】の意のままになる恐るべき【スキル】だ。
よもや春日井真澄にそこまでの力があったとは…
レベル400超えのプレイヤーでも超級攻撃を修得している者は殆どいないと聞く。
流石は【プレイヤーキルマイスター】のパートナーだ。
これほどの力があるなら、評価を改めなければならない。
春日井真澄のギルドの中に【プレイヤーキルマイスター】がいるのだ。
会ったことはないがプレイヤー狩りにしか能がない男の実力などたかが知れている。
あの都洲河をも傘下に収め、一人で我孫子書記長にここまで肉薄したこの女の方が遥かに危険だ。
不知火生徒会長と同じレベルの将器を感じる。
それにしてもこれほどの攻撃を使えるなら、なぜもっと早くに使ってこなかった?
トリガーが一定以上のダメージ量だったのか。
生命の危機を感じるなど【特異代償】が存在するのか。
愚問だな。
今、考えることではない。
どうやら、自分の得意フィールドに誘いこむタイプではないらしい。
超級攻撃の典型は自分にだけ都合のいい世界を構築することにある。
そこに対象を誘いこみ、無尽蔵の攻撃を叩きこむことで勝利を確約する。
つまり、術者がフィールドの中に必ず存在する。
ところが肝心の春日井がここにいない。
ということは精神攻撃系か。
だとすれば、幸いだ。
精神攻撃系ならば、実時間とのズレがない。
ここで一年、二年過ごそうとも、この超級攻撃が解除されれば、数秒程度のタイムラグで戦闘に戻れる。
さらに俺は精神攻撃への耐性が高い。
なにせ心が充足し、トラウマや欠落というものがない。
折角の超級攻撃に精神攻撃を選ぶとは運のない奴。
さあ来い、春日井。
どのような世界を見せようとも、俺は耐えきってみせる。
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