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第822話 阿来津&雨佐美VS都洲河&春日井㉜

 こうなったら一撃で倒すしかないな。

 殴り合って、起死回生の機を見つけるといういつもの手は使えない。

 このまま、ずるずるやっても雨佐美のペースに乗るだけだ。

 阿来津と同じく最強技で一気に蹴りをつける。

 問題は【万象聖断】が使えない点だ。

 【万象聖断】は今、使える最強の技の一つだ。

 だが、成功したのは一度きり、それも奇跡のような偶然の産物だ。

 【黄金気】、【聖皇理力】の充実と共に完全な集中状態に入らなければ、使用はできない。

 とても今のような乱れた精神状態では使えない。

 今使ったとしても、ただの強い手刀にしかならないだろう。

 さらに【黄金気】と【聖皇理力】の並列展開が不可能という現状もある。

 【万象聖断】は元より不可能だ。

 だが、その応用であれば話は違う。

 【白気】は比較的初期に手に入れた【スキル】。

 故に回復や牽制技がほとんどで、決め手となる技の開発は殆どできていない。

 ということはまだまだ、開発の余地があるということだ。

 現にフェビアンは【白気】を使って多種多様な技を開発していた。

 どんな能力であっても達人者級の人間が使えば、それなりのものができる。

 まして、【白気】は人から羨望を受ける【スキル】だ。

 ポテンシャルの高さは否定のしようがない。

 【万象聖断】の極意を利用し、【白気】の奥義を今、この場で完成させるのだ。

 私は慣れた要領で【白気】を【集束】させる。

 【集中】と【増幅】が同時に為され、手に力が集まってくるのを感じる。

 同時に瞳を閉じ、心の遙かな深みにまで、集中を巡らす。

 そうすることで、身体中に纏っている【白気】の存在を一段階深く感じる。

 【白気】は【黄金気】と比べれば、遥かに静謐だ。

 【黄金気】が荒れ狂う大海だとすれば、【白気】は波一つない湖面のような印象だ。

 だが、どちらも本質かわりはなく、扱う者の能力次第でどんな風にも化ける。

 私はこの【白気】を使って何を表現するのか。

 【白気】は【黄金気】と比べてエネルギー量は少ないが操作・加工はひどく容易い。

 今なら、【白気】を使って何でも表現できる気がする。

 自然と表現という言葉が胸に落ちた。

 敵を倒す手段ではなく、自らの想いを表現する。

 操作・加工に秀でた【白気】はそれらを可能にする能力だ。

 よし、今のヒントでイメージが固まった。 

 私はできることが当然のように【集束】した【白気】を解放する。

 トリガーとなる技名は頭に浮かんだ言葉をそのまま口にした。


 「【一切の不純物のない(しろ)の世界】」


 読んで頂きありがとうございました。次回の投稿もなんとか頑張ります。

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