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第813話 阿来津&雨佐美VS都洲河&春日井㉓

 「準備に数秒かかる。その間、持ち堪えてほしいのだよ」


 都洲河が指示を出し、私の後方に下がる。

 ならば、その数秒、都洲河には毛筋の傷をも許さない。

 【黄金気】と【聖皇理力】を全力展開。

 【聖皇理力】でコーティングされた【黄金壁】を大きく取り、巨大な障壁を展開。

 並の攻撃であれば、物理攻撃だって通さない。

 私、自慢の万能の防御法。

 だが、私達が喰らっているのは光魔法の究極。

 この魔法の厄介なところは防御無視の効果。

 まさしく雨の如く光の矢が浸透してくる。

 【黄金壁】の防御を突破してくる。

 属性が違うからか、系統が違うからか、勢いは殺せているがシャットダウンできてない。

 故に、漏れ出てくる分は自分の身体を使って防御。

 都洲河の邪魔はさせない。

 しかし、累積ダメージが酷い。あまり長くは持たない。


 「待たせたな春日井。交代なのだよ」


 その声を合図に今度は私が都洲河の後ろに下がる。

 

 「俺は魔法の制御が苦手だ。故に【魔王】が持つ莫大な魔力は蓄積させ、いざという時のために取っている。それを今、解放した。無論、だからといって制御などできない。俺にできるのは極大の魔力を敵に向かって放つことだけなのだよ」


 そう話す都洲河からは闇の魔力が満ち満ちていた。

 魔力酔いしそうな程の魔力量。その風格もあって、今の都洲河は【魔王】以外の何者でもない。

 同時に長年の疑問も解けた。

 なぜ魔族の王たる【魔王とよすがわ】が魔法を使ってこなかったのか。

 身体能力だけで他を圧倒できるから、そう思っていたが違った。

 使わなかったのではない。単純に使えなかったのだ。

 

 「光魔法の究極は見せてもらった。ならば、魔王の持つ闇魔法の究極を見せてやろう」

 

 その一言で魔力が収束する。


 「春日井、後は頼んだのだよ…」


 その瞬間、都洲河の魔力が爆発した。

 とても、静かな声だった。

 穏やかで後悔など一辺たりとも感じさせなかった。

 だから、分からなかった。

 都洲河がどんな気持ちでこの魔法を発動させたのかを。  


 「【死幹衰夜餓零】」


 都洲河から放たれた一条の闇の塊は光を食い破り真っ直ぐ、雨佐美に向かって突き進んでいく。

 闇が光を喰っている!?

 光の雨をものともせず、むしろ喜々として光を飲みこみ突き進んでいる。

 対光魔法専用のカウンタースペル。

 光属性を持つ者がこんな魔法を喰らったら一巻の終わりだ。

 魔王が放つに相応しい勇者殺しの一品だ。

 だが、術者である都洲河の腕まで闇に喰われている。

 フィードバックをまるで制御できていない。

 これが今の今まで、この魔法を使わなかった理由か。

 敵を抹殺するのが早いか、術者が死ぬ方が早いか。

 こんなの自爆技ですらない。

 博打技だ。



 読んで頂きありがとうございました。次回の投稿もなんとか頑張ります。

 ブックマーク、感想、評価、メッセージなどあれば何でもお待ちしております。

 皆様のポチっとが私の創作の『頭が痛い…頭が痛い…頭が痛い…何もできね~昼寝→治ってる! 痛みがないってこんな幸せなことだったのね』(意味不明)ですので何卒よろしくお願いします。

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