第811話 阿来津&雨佐美VS都洲河&春日井㉑
「ちっ、だがまあいい…最低限の役目は果たせた。この勝負、俺達の勝ちだ」
阿来津がそう呟くと私達の頭上に巨大な魔法陣が出現した。
雨佐美の魔法が完成したのか。
だが、この魔法陣、規模が大きすぎないか?
このまま発射されれば阿来津も道連れになってしまう。
自動追尾型なのか?
「【魔王】に【黄金気使い】、ハイランカー2人を敵にまわして完勝できるとは思ってねえよ。こっちは1人、テメエらは2人。合計すりゃ、俺らの勝ちって訳だ」
阿来津は興味をなくした玩具を見るような目で、そう告げてくる。
敵味方の識別無しの殲滅型を撃ってくるつもりか!?
確かに威力を考えれば、殲滅型一択しかないが。
よく見れば、地面にも魔法陣が起動している。
範囲殲滅タイプだ。
おそらく魔法陣の外には脱出できない仕掛けがあるのだろう。
いや、それよりも阿来津は最初から死を前提に戦っていたのか。
2対1でも勝てればよし、負けた場合は雨佐美の魔法でまとめて殲滅。
時間切れの場合も同様だ。
雨佐美にとってはあまりに有利な展開だ。
阿来津を疑似餌程度にしか思っていなかったということか。
「勘違いしちゃなんねえ、俺が雨佐美とタッグを組む時はいつもこうだ。大抵は俺が敵を殲滅しちまうから、アイツの出番なんてほとんどねえ。敵を止められない前衛なんて要らねえし、敵を倒しきれない後衛に価値はねえ。お前らが俺より強かったってだけの話だ。そういう奴を相手に絶対に負けられない戦いを挑む場合はどうするか? 俺より強い相手に負けないためにはどうするか? その答えがこれだ。広域殲滅魔法【極光零域放射驟雨】。詠唱完了までにやたら時間がかかるのがネックだが、発動すれば、光の矢が雨あられの如く降り注ぐ。光の矢は域内全ての生物が死ぬまで止まることはねえ。脱出は不可能。術式の破壊も不能。弱った奴から死んでくって寸法だ」
「んなこと、どうでもいいんだよ!!!」
気付けば、私は叫んでいた。
我が事のように雨佐美の魔法を賞賛する阿来津の姿が気に入らなかった。
巻き添えで殺されることを前提にした戦い方も。
命を軽視した考え方も。
なにより、私達の戦い自体を馬鹿にされた気分だ。
「テメエは生きたくないのかよ! 囮で終わって満足なのかよ!! 至上の戦いをして、その先の結末を見ずに退場して、それじゃあ、お前は一体、何のために戦っていたんだよ!!!」
「…」
阿来津は答えることができなかった。
歯を噛みしめ、じっと自分の拳を見つめていた。
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