第809話 阿来津&雨佐美VS都洲河&春日井⑲
さて、どうするか。
今の実験で分かったがやはり、牽制そのものが通用しない。
無効化されていると言っていいだろう。
幻術、目眩まし、精神攻撃など実態の伴わない攻撃は全て通用しないのだろう。
そうして、実態攻撃にのみ最強のカウンターが発動する。
遠距離、中距離、近距離にかかわらずだ。
究極の待ちの戦術。
【不惜審命の構え】
先手がこちらにある分、考える時間だけは膨大にあるがいつまでも膠着状態というわけにもいかない。
羅喜の言う通り術者の想定を超える最強の一撃で崩しきるしか方法はないのだろうか。
私から見れば、そんな誰もが辿る選択肢の方が危なかっしく思える。
誰もがそう考えるからこそ、そこに改良の余地があるからだ。
折角、究極の技を放つのだ。
必殺必中のタイミングで使いたい。
そんなことを思っていたら、閃いた。
酷く危険な策だが上手くいけば、阿来津の思考の隙を突けるかもしれない。
リスクはある。
が、そもそも、この状況ではリスクの無い選択肢が存在しない。
やってみるか。
【白気剣】を高速投擲。
棒立ちの阿来津の眉間に高速で飛んでいく。
羅喜の言う中途半端な攻撃。
ハイランカーであれば、誰もが迎撃可能な凡庸な一撃。
それがトリガーだった。
カウンターが来た。
本当に接近すら気付けない。
速いとかって次元の話ではない。
完全な【転移】のそれに近い。
そうして天高く掲げられた右腕が正確に私に向かって落ちる。
それを待っていた!!!
【聖竜皇の命令式】でこう命じていたのだ。
《私の命を狙ってくる縦からの手刀を私の右腕の手刀で迎撃せよ!》と。
羅喜ですら、捉えられない速度の手刀。
ならば、命令式で自動迎撃すればいい。
こちらは万物を断つ一刀。
斬撃の概念そのものだ。
撃ち合えば、威力で負ける訳がない。
「【万象聖断】!!」
技名を叫んだ瞬間、阿来津の胸に深い斬撃線が走る。
競り勝った!
見事、目論見通り阿来津の必殺致死の手刀ごとぶった斬れた。
阿来津のカウンターを完璧に攻略できた。
だが、それでも阿来津の瞳に動揺はない。
【拳聖】の誇る最強のカウンターを破ったはずなのに…
見れば、左腕に力が集中している。
(やべえ、逃げろ!!!)
羅喜からの警告が聞こえる。
くそっ、羅喜の奴、見立てを間違えたな。
弐の太刀があるなんて聞いてないぞ。
何が一刀に全てを賭ける最強の構えだ。
「【抜刀拳・弐の太刀】」
【万象聖断】の技後硬直のせいで防御すらもままならない。
【拳聖】の左腕より解き放たれた高速の手刀が私の胸に直撃する。
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