第805話 阿来津&雨佐美VS都洲河&春日井⑮
流石に戦闘中の説教など頭に入ってこない。
こういう時は話の流れを変えるのが一番だ。
熱意を持って私を叱ってくれる羅喜に辟易しながら、私は今、閃いたアイデアを口にする。
「だったらさ、今、戦闘中に覚えることはできないかな。さっき【伏斜走法】って【スキル】が手に入ったんだけど、そんな感じで…」
(まじか! お前ら異界人の順応性ってのも分からんのだよな。なんであの程度の実践で【伏斜走法】の極意が入手できるんだが…)
心底、不思議そうな様子で羅喜は考え込む。
私は私で異界人の認識ができているということは羅喜もNPXCなのかと疑問が湧く。
(まあ、検証は後か。だったら、この戦闘で最低限度の小技、中技を手にいれるしかねえ)
(問題は相手が【拳聖】だってことだ。そろそろ、俺や主様の癖とかも読まれるころだぞ…)
「やってみるしかないよ。小技、中技を手に入れつつも、戦術パターンに変化をつけるしかないね。羅喜の独壇場じゃない!」
(気安く言ってくれるぜ。こんだけ、精神と頭脳を酷使する戦いは初めてだぜ…)
それだけ告げると切り替えができたようだ。
冷徹な声で指示が飛んでくる。
(まずは遠距離攻撃で牽制をかける。【黄金気弾】を三発精製! 一発は地面を削るように放て)
羅喜が言い終わる頃には既に一発目の【黄金気弾】を放っていた。
戦闘が進めば進むほど【高次元同調】はより深く馴染じんでいた。
もはや羅喜の発想と私の判断との間にはコンマ数秒のズレもない。
同時に羅喜の意図も読み取れた。
私が放った【黄金気弾】は速度こそ落ちているものの、盛大に土煙と岩塊撒き散らしながら爆走していた。
(続いて第二射発射! こいつは速度を優先して思い切りぶっ放せ)
そう羅喜が閃いた頃にはもう投擲体勢に入っていた。
腰、肩、肘、手、指、全身のバネを使った初めてのモーション。
野球もソフトボールの経験も無いのに、こう身体を使えばいいと羅喜から着想は得ていた。
意図せず【黄金気弾】も普段よりもひと回り小さな弾を形成し、猛烈な速度で飛んでいった。
だが、阿来津は怯まない。
第一射の目眩ましは素手で弾き、第二射の高速投擲は最小の動きで躱そうとする。
しかし、第二射の高速投擲は握りも変えていたのだ。
阿来津の手元で高速で弧を描き懐に飛び込んでいく。
さしもの【拳聖】もこんなエキセントリックな遠距離攻撃は読んでいなかった。
阿来津は大きく身体を捻ることで回避した。
だが、決定的に体が崩れた。
第一射目の爆音に紛れて接近していた私達がそんな決定的な隙を見逃すはずがない。
第三射はキャンセル。
瞬時に右腕に【黄金気】を収束させて、密着状態で放つ。
「【黄金烈眞掌】」
読んで頂きありがとうございました。次回の投稿もなんとか頑張ります。
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