第803話 阿来津&雨佐美VS都洲河&春日井⑬
体を極限まで落とし、全速疾走。
地面スレスレで走っているせいで、草やら埃やらが顔に直撃するが今は我慢。
こうすることで、前方投影面積を削り遠距離攻撃の直撃を避けているのだろう。
私にはない発想だ。
偶然だが【伏斜走法】というスキルが手に入った。
だが、今は吟味検証する時間がない。
後でやる宿題がまた増えた。
阿来津がようやく【黄金気弾】の攻撃から態勢を立て直す。
同時に奴の視界から逃れるために、大きく右側面に跳ぶ。
一瞬たりとも、照準を固定させないプロの軌道。
それが天啓のように次から次に湧いてくる。
【高次元同調】が完璧に作動しているのが分かる。
戦闘に対しての発想だけでなく、観察力も上がっている。
身体の硬直具合から、阿来津の緊張が見て取れた。
阿来津は私の動き方が変わったことを理解し、防御に重点を置いているのだ。
要するに様子見だ。
羅喜が舌打ちしたのが感覚で分かった。
【修羅王】の好んだ展開ではなかったのだろう。
なぜか正面からの殴り合いをしたい感覚がある。
知らず知らず発想が好戦的になっている。
徹底的に攻撃が主体の考え方だ。
先手を取る。相手に思考する時間を与えない。
脳内で言葉が濁流のように押し寄せてくる。
急き立てられ、自分の意識が希薄化してくる。
上空に飛び、落下速度を利用してのダブルスレッジハンマーで攻撃。
防御の上から叩き込む。
が、阿来津は当然、それを想定した防御を行なってくる。
攻撃をシャットダウンした本気の防御だ。
【黄金気】と【聖皇理力】で固めた一撃でも、びくともしない。
いかに羅喜と【高次元同調】を行おうとも出力自体は上がっていないのだ。
しかし、私達もそれを読んでいる。
スレッジハンマーが防がれたことにより、空中に一瞬、静止時間ができる。
その間に高速の蹴りを阿来津に放つ。
汲み取られ、投げに持っていかれないために威力より速度を優先した雷速の蹴り。
顔面に入れることで数秒だが意識を奪う。
驚くほど、きれいに入った。
初めてのクリーンヒットと言ってもいい。
この隙に大技を!
そう思ったが羅喜から待ったがかかる。
意見が衝突を起こしたので、一旦、距離を取って下がる。
阿来津を見ると、盛大に拳が空振っていた。
確実に意識を刈ったはずだが、無意識下で反撃を行なったようだ。
相手は【拳聖】だ。
そのぐらいの芸当はやってみせるか。
あのまま、攻撃圏内にいれば私がクリーンヒットをもらっていた。
危ない。危ない。
チャンスだからとがっついたら、その瞬間に終わる。
そして、数少ないチャンスをものにできなければ、永遠に勝利は来ない。
相反する2つの要素が同時に存在するのがハイランカー同士の決戦なのだ。
私はとうとうそんな舞台に立っていた。
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