第797話 阿来津&雨佐美VS都洲河&春日井⑦
「はっきり言うわ、阿来津。あんたのやってることは我孫子に取ってマイナスになっているのよ」
私がそう告げるとと問答無用で殴りかかってきた。
後衛を守るための守備的な動きではない。
必殺を期した【拳聖】の本気の一撃。
不意を突かれたため、避けることも、防ぐこともできない。
だが、今の私には最強のボディーガードが常駐している。
惑わされず、己が言葉の槍を紡ぐのみ。
「兵士だとか将軍だとかなんて関係ない。率直に言ってあなた達のやってることが我孫子の不利益になっているのよ」
目の前では都洲河が肉の盾となって私を守っている。
先程までの単独討破を意識した動きではない。
私を守るために特化した動き。
今の阿来津とは真逆の動きだ。
「春日井の言葉に恐怖を感じたか、阿来津? その畏れは全く正しい…だが、遅すぎた。既にお前は春日井の術中の中。お前の心理は完璧に分析されている…」
「たかが言葉一つで俺を殺れるってか!? 落ちるとこまで落ちたな、都洲河さん。そんなつまんねー台詞をあんたから聞くなんてよ」
「それはお前が春日井真澄を知らんから、そんな軽口が叩けるのだよ。言葉一つで帝国に戦いを挑み、言葉一つで帝国に拮抗する軍隊を作る。彼女の言葉には時代を動かす力があるのだよ。そして、その力のベクトルが今、お前だけに向いた。覚悟するのはお前の方なのだよ」
都洲河が阿来津とやり合いながらハードルを上げてくるが今は無視。
阿来津の表情に変化はなかったが、ムキになって殴りにかかってきたということは奴の琴線にふれたのだろう。
ならば、この方向で間違っていないはず。
「聞く耳を持たないようだけど、話を続けるわね。主に不利益をもたらすのがあなた達の本懐なの、阿来津?」
「ふん、さっき雨佐美も言っただろう。テメエみたいなバイ菌がいたんじゃ、我孫子さんの周りの人間が皆、迷惑するんだよ。だから俺らがお前を排除しようとしてんだろうが!」
とうとう私の言葉に反応してきた。言葉が通じるなら、共通認識だって見出だせるはず。
共通認識が作り出せれば、そこから共通利益を導き出し、取引ができるはずだ。
戦闘ばかりが答えじゃない。
戦闘以外で戦闘を終わらせることができるはずだ。
だからこそ、私は言葉に魂を乗せて断固として発言する。
「話が噛み合ってないわね。それにその時点で間違っているわ。それは執事の仕事なのよ、阿来津。兵士が執事の真似事をしたら駄目じゃない。兵士と将軍、執事。それぞれ異なった職分を持っているわ。兵士が主のために、美味しい食事を作る。それが間違っているって分かるでしょう。それはコックの仕事よ。兵士がやるとしても余暇や余興でやるべきことなのよ」
読んで頂きありがとうございました。次回の投稿もなんとか頑張ります。
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