第794話 阿来津&雨佐美VS都洲河&春日井④
少しぐらいは不意を突けたはず。
そんな望みは一合、打ち合った瞬間、砕けた。
阿来津は淡々と自分の構成を破棄し、私の攻撃をいなしている。
そこに感情の乱れは一切ない。
何があっても雨佐美の元には近づけない。
前衛としての覚悟がそこにはあった。
故にこの攻撃は有効なはず。
「【白泰山眞剣】」
眼の前の阿来津ではなく、都洲河と交戦中の雨佐美を狙う。
【白気】で構成された白の剣は無防備な雨佐美の背中をぶち抜いた。
爆裂する障壁のせいで速度こそ殺されたが貫通した。
私を串刺しにしたお返しだ。
即座に第二擲を放とうとしたが猛烈な勢いで阿来津が迫ってきた。
先程より、攻撃が荒い。
前衛としてのプライドが傷ついたのだろう。
これまで一切、乱すことのできなかった鋼鉄の自制心をここで崩せるとは意外である。
だが、攻撃力は先程よりも上がっている。
目的は果たしたし、ここは一旦、間を取るか。
雨佐美に対して大きく構えを取るとムキになって射線軸上に入ってくる。
自分の身を挺して雨佐美を守る気だ。
そのタイムラグを利用して大きく後方に跳ぶと、阿来津は苦虫を潰したような顔をしていた。
そうして阿来津と睨み合っていると都洲河も合流してきた。
全身、ズタボロで【高速修復】すらも追いついていない。
だが、戦意は旺盛だ。
どうやら雨佐美と都洲河の戦いも泥試合であったようだ。
圧倒的な火力と攻撃的な防御を駆使し、絶対に自分の間合いに近づかせない雨佐美とどれほど攻撃を受けようとも前進を止めない都洲河。
形勢は常に雨佐美有利に進んだが、何度かのチャンスをモノにし、インファイトの状況を作ってさえしまえば一方的な展開になった。
実際、私の援護は有効に働き、後、何発か入れれば落とせたとのことだった。
やはり、後衛らしく無尽蔵のHPなどは持っていないようだ。
だとすれば、先に雨佐美を叩き、阿来津は遠距離攻撃を使ってなぶり殺すのが有効か。
とはいえ、雨佐美のあの致死の弾幕をどうくぐり抜けるべきか…
「それにしても、都洲河はよく雨佐美の攻撃を受けて死なないね。私なら数発受けただけでアウトだよ」
「【純粋防御力】の違いなのだよ。おそらく雨佐美の熱線には【障壁貫通】の付与がされているのだよ。【黄金気】と【聖皇理力】の並列展開は脅威の防御術だが【純粋防御力】はそれほど上がっていない。【障壁】の強度に頼りすぎなのだよ。だから、こういった【障壁貫通】のエクストラスキルを持った相手だと手こずる。ここから上のステージは皆、ああいった反則潰しのスキルを所有している。地力の研鑽も怠ってはならんのだよ」
なるほど、【障壁】自体が超硬度の防御力を持っているがそれを無効化するスキルを使われれば防御力は発揮できないというわけか。
【障壁無効化】ではなく、【障壁貫通】だったのが唯一の救いか…
それでも随分と玄人じみた考え方をしてくるようになった。
読んで頂きありがとうございました。次回の投稿もなんとか頑張ります。
ブックマーク、感想、評価、メッセージ等あれば何でもお待ちしております。
皆様のポチっとが私の創作の『書きたくない衝動が出た。しかし、しばらく書いてるとその衝動は霧散する。問題なのは書きたくない衝動が出た時はいつも、その感覚を忘れてしまうことだ…』(意味不明)ですので何卒よろしくお願いします。




