第792話 阿来津&雨佐美VS都洲河&春日井②
近距離攻撃ができないのなら、遠距離攻撃で仕留める。
そう切り替え、貯めの構えを作ると阿来津が都洲河を躱し、こちらに向かって跳んできた。
まだ、モーションにすら入れていないのに。
後衛を死んでも守る前衛の鏡のような奴だ。
感知能力も一流か。
いや、都洲河の腰が引けすぎているだけだな。
壁役が全くできていない。
後でとっちめてやる。
【白泰山眞剣】の構成を破棄し、接近に備える。
都洲河が苦手とする相手だ。
私の未熟な剣術では攻撃を当てることすらできないだろう。
よって、剣はなし。
私も拳で勝負するしかない。
【聖竜皇の竜眼】を使用し、初撃を予想。
阿来津は助走を活かした顔面パンチを狙っている。
【黄金壁】で防御し、カウンターを取る。
そう目論んでいたが気付けば、後方に吹っ飛んでいた。
顔面がヒリヒリする。
おそらく、超加速を行いクリーンヒットを取ったのだろうが早すぎる。
全く見えなかった。
予想していたのに予想を越えてきた。
こいつ、祥君レベルの近接の達人だ。
一発受けてみて初めて分かった。
そう、脳内で電流が走った瞬間、呼応するように阿来津の職業解析が終わった。
【拳聖】
シンプルな字面だが近接において、これほど怖ろしい職業は他にない。
「へへっ、俺はお前とも殺ってみたかったんだ。嬉しいぜ、春日井」
邪気のない笑顔でそう呟くとまたしても私では知覚できない高速攻撃を放ってくる。
それも連続でだ。
態勢を整える暇さえない。
今、分かった。
都洲河はこの状況を嫌っていたのだ。
私は【黄金壁】のおかげでまだ耐えられているが、それでも攻撃の何発かは通っている。
【黄金気】と【聖皇理力】の二重装甲を抜いてくるとはどういうカラクリなのか。
「やっぱ、【気使使い】はやり辛えな。中でも【黄金気】は別格だな…こんだけやっても致命のダメージが入らねえ。俺のと相性が悪すぎんだわ。拳が【気】で減衰させられてちまってる。決定打に欠けるなんて状況じゃねえぜ、これは」
すまし顔で連撃を行いながら、阿来津は愚痴を吐く。
その間も、一切、手を緩めてこない。
私は少しでもダメージを減らすべく、防御構成に全力を尽くしかない。
都洲河が正しかった。
一旦、この状況に陥れば脱出策がない。
この状況を作っただけで普通は負けが決まる。
そのぐらい馬鹿げた攻撃力を持った拳なのだ。
こんな奴を相手にしてバカ正直に近接戦闘なんてやってられない。
距離を取らなければ。
そう判断し、後方に大きく跳ぶと超威力の熱線が私を襲った。
無論、雨佐美の仕業だ。
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