第787話 【皇帝】VS【魔王】の舌戦①
「ふむ…任務に失敗したと聞こえたが俺の聞き違えか、都洲河? 俺の知る都洲河であるなら、そのような事態に陥れば羞恥で自害しているはずだがな」
我孫子の声は冷たく、敗残者を睨めつける目だ。
こんな状況で説得なんかできるものなのだろうか。
「いえ、任務失敗で間違えありません、我孫子書記長。私は春日井に敗北したのです。それも完膚なきまでに」
一方の都洲河はなんら恥じ入る様子もなく現況報告を行っている。
周囲の帝国兵はそれをハラハラと怖れを持って見ており、飾磨巧はいつものようにニヤニヤとショーでも見てるかのように観劇していた。
「貴様が本気になれば、そこの小娘一人を殺すことぐらいわけがなかろう。たとえ【プレイヤーキルマイスター】が出たところで問題はない。一対一で貴様に勝てる者などいるはずがない。何があった? いや、何を思った? 詳しく話してみろ」
そんな都洲河の様子に根負けしたのか先に我孫子の方が緊張を解いた。
一対一でなら祥君を倒すとまで言ったのだ。
なんだかんだで都洲河のことを評価しているのだろう。
「私は春日井に敗北して思ったのです。我孫子書記長は彼女を敵に回すべきではないと。ここで彼女を倒すことは容易い。だが、それでは彼女と【プレイヤーキルマイスター】との間に決定的な遺恨を残すことになりうる。我孫子書記長の野心のためにも、それは良くないと判断したのです」
「兵であるお前が将であるこの俺に意見しようと言うのか!」
大喝であった。雰囲気が和らいだとか思ったがそんなことはなかった。
2人は言葉で持って斬り合いをしているだ。
「平時ならいたしません。ですが、有事であれば話は別です。真の忠臣なら主の心に背いてでも換言を曲げない。今がその時なのです。なんと言われようがあなたは春日井と戦うべきではない!!」
恫喝にも似た我孫子の打ち込みに都洲河は全く恐れを抱かずに返事を返す。
都洲河の瞳には迷いがない。
覚悟を決めた男の目だ。
覚悟が決まっているが故に言葉は鋭く、発言には確かな重みがあった。
それ故、【皇帝】である我孫子に対してでも負けていなかった。
「小娘一人に誑かされたか?」
「誑かされたわけではありません。私は春日井に可能性を見たのです。【プレイヤーキルマイスター】ではなく、彼女自身に。彼女は【プレイヤーキルマイスター】すら従える者だ。私が仕えてもいい。そこまでの器量が、将の将たる才能が彼女にはある」
怒涛の評価だ。
そこまで評価されるとかえってこそばゆいが…
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