第778話 小悪魔女勇者との邂逅④
都洲河のその一言に流石の飾磨巧も雰囲気が一変する。
飄々とした態度を崩していないが一言も聞き漏らすまいという気迫が垣間見える。
祥君。祥君か…
彼に参戦を依頼することは私の格が下がる。
私の望みは彼と並び立つことなのだから。
そう思ってこれまで頑なに彼への参戦を依頼してこなかったが…
これも私の拘りなのかもしれない。
事態がここまで動いている以上、ジョーカーを切る時なのかもしれない。
彼に正面から突撃してもらい私達が背後から突入する。
あるいは正面からの突撃を援護するというのも悪くない。
祥君であれば、敵がどれほどの戦力を投入してこようとも関係ない。
私達はただ、それを援護すればいいのだ。
祥君であれば単独での突撃でも我孫子の元まで到達してしまうかもしれない。
夢は広がる。
だが…
「悪い、都洲河。祥君の参戦はない。というか連絡手段も持ってないよ」
連絡手段ぐらいなら持っているが敢えて言わない。
自分の中の未練を断ち切る意味でもだ。
「相手は対人最強の【プレイヤーキルマイスター】だよ。このぐらいのステージには降りてきてくれないよ」
こんなのはただの強がりだ。それでも必死で強がる。
弱みを見せたら、それが現実になるからだ。
自分自身が祥君無しでの勝利を信じずして、どうしてその結果を実現させることができようか。
「いないはずの戦力について語るより、今ある戦力でどう攻略すればいいか考えようよ」
そう告げると飾磨巧からも鋭さが消え、都洲河もそれ以上、追求してこなかった。
◇◆◇
「やあああああああああああああああああ」
自ら作り出した掛け声だけを相棒に私は戦場を独りで駆ける。
目の前にはNPCの兵が十重二重に陣を引いている。
無論、プレスビテリアン帝国の兵だ。
中には八束の生徒が混ざっているのも分かる。
都洲河は飾磨巧と一緒に後方で私の様子をじっと見ているはずだ。
結局、都洲河と私が選んだ戦術は時間差をつけた正面突破。
敵方の主将であるところの私が正面から突入することで敵に伏兵の存在を疑わせる。
総大将が単騎で突出するわけがない。これは罠だという意識を利用するのだ。
伏兵を疑う敵陣は積極的な用兵ができない。
迷いは僅かだが時間を生むはず。
その死角を利用し、私が我孫子の元まで一気に地ならしをする。
そうしてできた薄い壁を都洲河が一気に破る。
もし飾磨巧の裏切りでもあれば一瞬で破綻するなんとも脆弱な策だが2人でできる策などこんなものだ。
ごじゃごじゃ考える時間は終わった。
決まったのなら、後はただ駆け抜ければいい。
読んで頂きありがとうございました。次回の投稿もなんとか頑張ります。
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