第773話 修羅王戦を終えて③
私はマムルークを後にし、生徒会執行部の本陣に向けて出発した。
隣には都洲河が並走している。
走りながら自分の状態を確認する。
鬼怒川のおかげでHPは徐々に回復している。
おかげで一撃死の心配がなくなった。
なにより気持ちに余裕ができてきたのが大きい。
心を平静に保つことができるなら【黄金気】の展開もできてくる。
【黄金気】は【聖皇理力】と同じでほぼ無尽蔵だ。
最近、ようやくそれが実感できるようになってきた。
究極的には扱う者の心次第でどこまでも捻り出せる。
自分が無理だと思えば、そこまでだし、まだやれると思えばどこまででも捻出できる。
問題なのは疲弊消耗したとき、無意識下でもう無理だと心がブレーキをかけてしまう点だ。
こうなると無尽蔵だと分かっていても展開などできない。
できるという知識とできないという感情が混ぜこぜになって成立しない。
心の矛盾が正確に反映されてくる。
精神修練などを行えばいつか、どんな消耗状態でも【黄金気】の展開ができるだろうか。
できなければ永遠に祥君の隣になど立てないだろう。
修羅王との戦いでそれを思い知った。
まだまだ修行が必要だ。
そして良き戦場も。
「それで都洲河、我孫子の元へ行って休戦が為る確率はどのくらいあるんだ」
もはや、都洲河を我孫子の元に連れて行けば休戦が為るといった単純な図式はなくなった。
場合によっては我孫子を含めた生徒会執行部の連中と大立ち回りを演じることになる。
良き戦場どころではなく、絶望的な武舞台だ。
状況を正確に把握するためにも都洲河の見解が聞きたかった。
「正直、分からないのだよ。我孫子書記長の思惑など気分次第でいくらでも変わるのだよ。あの方の思惑を図るのは秋の空の天候を読むことより難しいのだよ。だが一つ確かなことがある。それはあの方は絶対に自分の言は曲げないということなのだよ。我孫子書記長は確かに俺にマムルーク攻略を任された。よって、俺が我孫子書記長に謁見し、顛末を伝えれば必ず停戦・講和はなるだろう。しかし、鬼怒川達がやろうとした俺を抹殺することで停戦・講和の芽を潰すという手段も同時に認めるような人物なのだよ。正直、鬼怒川が誰と繋がり応援要請をどのレベルの人間にまで伝えているかによるのだよ」
そこまで言うと、一息置いてさらに続ける。
少しでもHPが減らないように工夫して走っているようだ。
「鬼怒川はああは言ったが我孫子書記長に直接連絡するラインは持っていないはずなのだよ。必ず間に誰かを通して我孫子書記長に連絡を取ったのだと思う。なぜなら、我孫子書記長と直接、報告し、中止命令でも出されてしまえば、その時点で鬼怒川は終わりだったからだ。おそらく、鬼怒川としては全ての事を終えてからの事後報告という形が最も望ましかったはずなのだよ。それなら、我孫子書記長も追認するより他がないからだ。というわけで、これはチャンスでもあり、ピンチでもあるのだよ。我孫子書記長に会えれば停戦・講話はなる。逆に鬼怒川が報告した間にいる誰かとやらはこれから嬉々として我々に刺客を送ってくるのだよ」
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