第771話 修羅王戦を終えて①
光の収束が収まると鬼怒川は両膝をついた状態で倒れる。
成功したんだよな…
なぜか鬼怒川はピクリとも動かない。
まさか鬼怒川の精神まで抹殺してしまったわけでもあるまい。
一抹の不安を感じながらも心は平静だ。
理性は今の内に鬼怒川にとどめを刺し、PKを成立させてしまえとしきりに提案している。
同時にこれは罠なのでは? という疑念も排除しきれない。
不用意に近づくのは危険だろう。
今の私の防御力はほとんどゼロなのだから。
それは都洲河も同じだ。
十分すぎるほど間合いを取り、警戒を解いていない。
私が渡した【白気】はもうほとんど残っていない。
文字通り、先程の足止めで力を使い果たしてしまったのだろう。
最後の力を攻撃ではなく、修羅王への拘束に使うなどとどれだけ私を信頼しているのやら。
自然と笑みがこぼれてくるが今は我慢だ。
まだ、やるべきことは山程残っているのだから。
いつまでも、こうしていても埒があかない。
覚悟を決めて、おそるおそる修羅王に近づくと鬼怒川の唇が動いた。
「くけけ…まんまとやられちまったぜ…」
鬼怒川の声で修羅王は話かけてくる。
まだ、祓えてなかったのか。
瞬時に臨戦態勢に移行。
もはや、勝機はない。後はどれだけ、被害を少なくできるかだ。
「そう意気がるな…今回は俺様の完全敗北にしておいてやる。まさか、力で敵わないからって『祓い』に変えてくるとはな。精神体の俺様には随分とキツイお灸だったぜ」
そう語る修羅王には確かに戦意がない。
先程までは対峙するだけでも体力を消費するような圧倒的な存在感があった。
今は私がとどめの一撃を放っても無抵抗で受け止めそうな様子だ。
まるで戦闘そのものに興味を無くしたような。
エンディングを知っている映画には興味がないとでも言うような。
「格下相手に心臓まで使ったのにこの体たらだ。機転と度胸でレベル差を埋めやがった。これだから、戦いってやつはやめられねえ。お前についていけば、もっと面白い戦闘ができそうだ。約束通り俺様はお前のものだ。俺様の真名は羅喜だ。 煮るなり焼くなり好きに使いな」
そう修羅王が告げると鬼怒川の瞳から輝きが消えた。
>修羅王・羅喜と【主従契約】を結んだ。
メッセージウィンドウに修羅王と【契約】が完了したことが表示される。
それも【主従契約】だ。
私の同意もなしに【主従契約】が結べるものなのか。
(カカッ…これは騒がしい珍客がやってきたものじゃ。ワシは静かな環境が好きだというのに…)
(フザケた防御力を持っていると思ったが、玄導の旦那が居やがったか。あんた程の方が人間の配下に入るとはな。俺の目に狂いは無かったぜ、これは退屈しなさそうだな)
謎空間では早速、羅喜と玄導の小競り合いが始まったようだ。
【主従契約】を結ぶと同じ空間に格納されるようだ。
ディオだけは自分の空間を持っているようだ。玄導もディオも肉体を持っており、羅喜だけが精神体なのにおかしな話だ。
謎すぎる。
しかも、どうやら2人は知り合いらしい。
まるきり予想外の展開だが2人は仲良くやっていけるのだろうか。
読んで頂きありがとうございました。次回の投稿もなんとか頑張ります。
今回は2回に分けて書いたのですがやはり、分割はやりやすい。これを7分割までもっていけたら1万文字ぐらいいけそうなのに…
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