第770話 修羅王の魔眼を攻略せよ⑬
圧縮、圧縮、【白気】を圧縮。
できる最大の密度で。
精製できる最高純度で。
【聖皇理力】を使えば、どこまででも圧縮強化できることに気付く。
あるいはこれが【聖皇理力】の、第3系統外の並列運用の真の使い方なのかもしれない。
そうしてできた【超圧縮白気】の塊を掌の中で球状に保つ。
人差し指の爪よりも小さな塊だ。
ばれないようにそっと両手で隠す。
できた。
今できる最強の構成である。
文句なしに規格外の力を秘めているのが分かる。
ここまでは難しくない。
問題は高速で動く相手に対してどうやって当てるか。
もはや私の防御力はゼロに近い。
身体能力への補正もほとんどない。
そのぐらい絶大な集中をこの【超圧縮白気】へ振り分けている。
都洲河が上手く修羅王の動きを止めてくれればいいのだが…
だが、都洲河は薄れゆく【白気】を用いて懸命に修羅王と相対している。
互いに高速移動を繰り返し、とても連携を模索する余裕などありはしない。
なにか修羅王を誘いこむことのできる餌でもあればいいのだが…
生物でもないのに不可能か…
いや、奴が望むものがある。
それも私が所有しているものの中で。
さらにリスクが上がるがこれしかない。
息を大きく吸い込み、気合をこめて吐き出す。
「おい、修羅王。【魔王】とばかり遊ぶな! 私とも勝負しろ!! なんなら、この身体をやるぞ。私を殺せたらだけどな」
都洲河と戦いながらも全周囲警戒を維持していたのだろう。
私の挑発とも報償提示とも取れる台詞を聞いて、修羅王はまっすぐ私に向かって飛び込んでくる。
現金な奴だ。やはり、後衛よりの鬼怒川の肉体よりも前衛よりの私の肉体の方が奴に取っては魅力的なのだろう。
あるいは都洲河との戦いに飽きてきたのかもしれない。
とにかく目論見は成功。
問題はカウンターでの発動になる点だ。
今のは私には修羅王の一撃に耐える力も避ける術も持っていない。
奴の一撃を喰らえば呆気なく死ぬ。
だが、既に【聖竜皇の竜眼】で致命の一撃を喰らえば自動で反撃するよう命じてある。
つまり、現時点で私の勝利は確定しているのである。
後は修羅王の最後の一撃が私を貫くまで、構成の精度をさらに高めるだけ。
果たして修羅王はものの数秒もしないうちに私の間合いに入ってきた。
次に認識した時、私のHPはゼロになっているだろう。
しかし、いつまでたってもその瞬間がやってこない。
都洲河だ。
都洲河が修羅王を背後から羽交い締めにして私を守ったのだ。
「今だ!!! 春日井!!!」
都洲河が叫ぶより前に私は飛び出していた。
「【皓き輝祇】」
超新星の爆発に比肩する圧倒的なまでの光が修羅王を包んだ。
読んで頂きありがとうございました。次回の投稿もなんとか頑張ります。
今週は時間が結構あったのにやっぱり書けなかった。まあ、直しはちょっと進んだけど。
もうちょっと頑張ろう。
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