第767話 修羅王の魔眼を攻略せよ⑩
「現状、どうあがいても修羅王は倒せない。だったら、発想を変えて修羅王の【憑依】を解くことを勝利条件にしよう」
「なるほど、【憑依】の核となっている【修羅王の魔眼】を狙うわけか」
都洲河の言うような一発逆転の便利な策などありはしない。
ダサい方法だが弱点を狙い勝負を有耶無耶の内に終わらせるしかないだろう。
「だが、単なる目潰し程度の攻撃では【憑依】の解除はできない。眼球を抉り取るぐらいの高威力攻撃をピンポイントで当てる必要がある。それに関して方策はあるのか?」
都洲河の追求に対して私は押し黙る。
正直、不完全だが方策はある。
さっき、閃いたのだ。
だが、この方法は強力すぎる。
便利すぎるというべきか。
パーティーメンバーでもない都洲河をどこまで信じていいものか…
「やはり、そこまでの方策は持っていないか…やむを得ん。あんなバケモノを生み出したのは俺の責任でもあるのだよ。俺が命がけで奴の動きを止める。眼を潰すのはお前の役目なのだよ、春日井」
そう告げると都洲河は【魔皇紋励起】の出力をさらに上げ、修羅王に向かって行こうとする。
だが、全身から間欠泉のように血が流れ、端から見ても【魔皇紋励起】の制御に成功していない。
あんな出力で修羅王と対峙しては数分も持たないだろう。
都洲河は文字通り捨て石になろうとしているのだ。
命を賭けて。
覚悟が足りなかったのは私の方か…
「都洲河、【魔皇紋励起】の出力を抑えろ。先程までと同じ制御できる最大規模での運用でいい。足りない分は私が補う」
それだけ告げると、私は両腕で都洲河の両肩を掴み意識を集中させる。
投擲による回復は成功したのだ。
直接接触のアドバンテージを利用すればできるはずだ。
こと【エネルギー操作】で私が失敗を犯すはずはない。
そう自分を鼓舞し意識をさらに深みへと沈めていく。
イメージするのは回復ではなく、強化。
そう、私の策とは強化である。
それも自分の強化でなく、他人の強化だ。
剣を強化するように【白気】で都洲河を強化するのだ。
【白気】は対象へ害意を持って流せば攻撃になるし、対象への慈しみを持って流せば回復になる。
ではどういう心境に至れば他人を強化できるのか?
ヒントは武器の【威力強化】にある。
自分への身体の強化は【白気展開】時にオートで為される。
武器の【威力強化】は武器を自分の身体の一部だと思い込み、武器に【気】を流し込む。
ならば、都洲河を自分の身体の一部、無くてはならない必須の存在だと思いこめばいい。
結局は心の有り様ひとつだ。
私がどこまで都洲河のことを信じられるかにかかっている。
都洲河は先に信義を見せてくれた。
ならば、今度は私の番だ。
「【白盟渡河】」
読んで頂きありがとうございました。次回の投稿もなんとか頑張ります。
なかなか1000文字を超えるのは難しいですね。もっと毎日書かないと、とても1000文字は超せません。
この執筆をしている時だけが私を世界の正常な「部品」にしてくれるというのに…
う~む、コンビニ人間は絶対買いだな。読みたい病が発動している…
私的には『世界の良き歯車でありたい』というリトルバスターズ! のクドの台詞と被ったが…(アニメ版しか見てないですが…)
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