第754話 鬼怒川は春日井真澄を前にして、ふと物思いに耽る⑧
【無影夢想魔眼】による幻術から解放された春日井は尋常じゃない強さで襲ってくる。
こちらは【魔王調伏】で意識を割いているというのに。
オートだと先程のように都洲河から思わぬ反撃を受ける。
ある程度、こちらで制御しつつ同時に春日井の相手もしなければならない。
結構な状況じゃないか。
既に春日井の攻撃力、防御力は一線級だ。
第3系統外の出力値に頼った不細工な戦い方だが、直撃を受ければ致命のダメージを受ける。
とても、ながら仕事をしながら戦っていい相手ではない。
今も規格外な範囲攻撃を撃ってきた。
しかも、たった今、編み出したような構成だった。
式に拙さが見えた。
それでも【被ダメージ減衰の魔眼(遠距離)】を使わざるを得なかった。
まともに喰らえば、致命傷を避けられないほど強烈な一撃だったのだ。
この【魔眼】は使う事自体が久しぶりだ。
回数制限があるからなるべく温存しておきたかったのに。
それでも今はまだ、戦闘経験値の差で僕の方が優勢だが、春日井が僕の魔眼に順応してくれば手がつけられなくなる。
ここまで来ると当初の予定と大幅にズレが生じていることを認めなければならない。
想定に無い展開に追い込まれていると言っていい。
負けパターンに入っているのかもと考えると恐怖まで感じる。
参謀役の僕が、いや、首謀者の僕がここまで身体をはっているのがそもそもおかしい。
都洲河の相手は僕がする予定だったので問題はないが他の人間の相手をここまでガッツリする予定はなかった。
遊撃役、兼、指揮者として全体を見るつもりだったのだ。
どうして、こうなった。
見通しが、想定が悪かったとでもいうのか。
だとしたら純粋に僕の責任だ。
心の中で内省を繰り返していると春日井から痛烈なヤジがとぶ。
「…お前のやってることは支配者の小間使いにすぎない。お前は支配者の重みや痛みを知らなさすぎる。それではいつまで経っても支配者の小間使いから脱することなんてできやしない」
言ってくれる。
考え事をしながらの会話だったので、それほど気持ちは入れていなかったがそれでも堪えた。
だとしたら、あのままずっと都洲河の太鼓持ちを続けていればよかったというのか。
無能な上の元で、こき使われろとでも言うのか。
確かに僕は人の上に立つ器じゃないよ。
それでも、上に立つ人間があまりに使えないので仕方なく立ってやっているのだ。
代わりの人間がいるなら、変わってほしいぐらいだ。
やはり、春日井とは決定的に反りが合わない。
分割思考なんて中途半端な真似は止めて、ブチ殺すことに専念しよう。
読んで頂きありがとうございました。明日の投稿もなんとか頑張ります。
ブックマーク、感想、評価、メッセージ等あれば、何でもお待ちしております。
皆様のポチっとが私の創作の『動くと暑いのに動かないと寒い。面倒くさい季節だ』(意味不明)ですので何卒よろしくお願いします。




