第750話 鬼怒川は春日井真澄を前にして、ふと物思いに耽る④
考えられる万全の準備、想定を行って待機する。
都洲河に気付かれないよう、かなり距離は取ってある。
作戦決行の判断を下すのも僕なら、偵察するのも僕の役目だ。
【遠見の魔眼】を駆使してずっと戦況を確認していた。
やはり都洲河も春日井もフザケた戦力を保有していた。
都洲河は【魔皇紋励起】、春日井は第三系統外の並列運用。
どちらも馬鹿げたスペックだ。
周到な事前準備が必要な僕の【神通力】とはえらく違う。
羨ましい。
最も妬ましいのは制御が難しいだけで代償が一切ないところだ。
あれが真の第三系統外なのかもしれない。
僕の【神通力】は【ジョブ】に存在する【固有スキル】に近い。
【天啓の魔眼】を使った時、偶然、近くで反応し、勢いで取ってしまったことが原因だ。
憧れの第3系統外を手に入れられると柄にもなく舞い上がってしまったのが悪かった。
早く手に入れなければ、取られてしまう。
そんな焦りもあった。
気に入らなければ、捨てればいい。
そんな甘えもあった。
いずれにせよ、大して確認もせず取ってしまった。
今から思えば、取るための準備だけ完了させておき、トラップでも設置してエリアごと封印してしまえばよかったのだ。
もっと慎重に情報を集めてから、修得すればよかった。
まさか、これほど実戦に不向きで、めんどくさい能力だとは思わなかった。
そもそも第3系統外とは魔法、カードによらない第3の【エネルギー炉】の略称なはずなのに、僕の【神通力】はあまり【エネルギー炉】に直結しているイメージがない。
事前に術式を込めた武器を用意し、対象の周囲、もしくは対象自体に設置しなければ発動しない。
術式を込めた武器が破壊されたら、【神通力】の構成は崩壊するので、当然それなりの武器を用意しなければならない。
当然、値は張る。
武器代を稼ぐ必要まで出てきた。
一番、厄介なのは即時対応が不可能な点か。
戦闘の最中、今すぐ力が必要という時に役に立たない。
なにせ、事前準備を終えていなければ発動さえしない能力だ。
これは僕の【魔眼】とは極めて相性が悪い。
僕の【魔眼】もどちらかといえば、準備型の能力だ。
事前に情報を仕入れ、準備をしておいてから戦闘に臨む。
そして、戦闘の最中、相手の手の内を読んで最も最適な【魔眼】を用意する。
この戦術に不満はないが時々、どんな【魔眼】も効かないような敵と遭遇することがある。
そんな時は常に手詰まりになってしまう。
できれば、そんな劣勢に陥っても力押しで逆襲できる春日井の【黄金気】や【聖皇理力】のような地力を上げる能力が欲しかった。
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